中国との貿易額の急増
また、ロシアは中国との経済関係を強化しており、貿易額は急増している。
中国の税関が発表した最新のデータによると、4月のロシアと中国の相互貿易額は約510億9,000万ドルに達し、1年前の同期と比べ25.9%増となった。
中国がロシアから輸入する商品のうち、原油、天然ガス、石炭が70%近くを占めている。また、ロシアは銅と銅鉱石、木材、燃料、魚介類を輸出している。
中国はロシアに、スマートフォン、産業・特殊機器、玩具、履物、自動車、エアコン、コンピュータなど、幅広い製品を輸出している。
12月には、ロシアと中国は、両国間の貿易業務を第三者を介さずに行うためのインフラ整備で合意している。両国は制裁の可能性を避けるため、貿易の通貨を米ドルとユーロから、人民元とルーブルに切り替えている。
これを見ると、ロシア製造業に打撃を与えるとされた機械部品やIT関連製品の欧米による禁輸処置は、中国からの輸入の増加によって十分に補われている可能性がある。経済制裁でロシアのGDPは-12%も落ち込むとする見通しは、現実にはならないかもしれない。
痛手を受けていないロシア経済
もちろんウクライナ戦争が長期化した場合、ロシアに有利なこうした傾向が今後も続く保証はない。大きく落ち込むことも考えられる。しかし、ロシア経済の国内の動向を見ると、いまのところ大きく落ち込む予兆はほとんど見られない。
ロシアの経済活動を示す「リアルタイム」の指標は、ほぼ維持されている。電力消費量も微減にとどまっている。ロシア最大の銀行である「スベルバンク」が運営する支出追跡システムによると、3月に一服した後、ロシア人はカフェやバー、レストランでかなり自由に消費しているようだ。
ロシア経済が堅調な最大の理由は、先にも書いたように、やはり原油と天然ガスにある。フィンランドのシンクタンク、「Centre for Research on Energy and Clean Air」によると、ウクライナ戦争以降、ロシアは少なくとも650億ドル相当の原油と天然ガスを船やパイプラインで輸出してきたという。
2022年第1四半期、これらからの政府の収入は前年同期比80%以上増加した。5月4日、欧州委員会はロシアの全原油の輸入禁止を提案し、年内に完全発効する予定だが、アジア圏への輸出急増によって損失分は補われてしまう可能性も示唆されている。