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ロシア経済は本当に崩壊寸前なのか?西側メディアが報じぬ「経済制裁が効かない」ワケ=高島康司

プーチン大統領の失脚は時間の問題?

この落ち込みの背景のひとつになっているのは、ロシアの製造業の打撃だ。アメリカ、欧州連合、およびその他の同盟国は、自動車や飛行機を含む多くの製造品の生産に使用されるマイクロプロセッサ-(チップ)などの重要技術のロシアへの輸出を禁止している。

さらに、製造業向け部品や、サ-ビスのサプライヤーなど、多くの西側企業がロシアとの取引を中止することを自主的に発表している。部品の供給がストップしているので、ロシアの製造業にとっては大打撃だ。

いまのところモスクワのようなロシアで最も豊かな都市に住むロシア人は、他の地域の人々が感じ始めている差し迫った解雇などの兆候をまだ見ていないため、楽観しているようだが、将来の経済の落ち込みは、多くの国民の予想を越えるはずだという意見も多い。

日本をはじめ欧米の主要メディアは、ロシア経済はこれからソビエト崩壊後の1990年代初頭に経験したような壊滅的な落ち込みとなり、それを背景にして国民の怒りが爆発し、プーチン大統領が失脚するのは時間の問題だという見通しも多くなっている。

無視できないロシア経済の強靭さと石油生産の伸び

しかし、いまのところこのようになる兆候はまったく見られない。

ロシアの独立系の世論調査機関、「レバタ・センター」の4月の最新調査では、プーチンの支持率は82%であった。これは3月の83%から1ポイントほど低下したものの、ウクライナ戦争前の支持率は60%台だったので、それと比較するとプ-チンの支持は圧倒的だ。失脚するような予兆はまったくない。

また、ロシア経済の要である石油の輸出も好調だ。欧米の制裁で落ち込みが懸念されたロシア国内の原油生産量が、5月に再び増加傾向にあることが明らかになった。アレクサンダー・ノバク副首相兼元エネルギー相は、「状況は安定している。生産量は4月に比べて増えている。5月には部分的に回復し、より良い数値になると期待している」と語っている。

これは、特にアジア太平洋地域のいくつかの目的地への輸出が実際に増加したことが要因だ。ロシアは現在、中国へのパイプラインの拡張や新しい港の建設など、石油供給の多様化のための新しいインフラ・プロジェクトの開発を検討している。実際にロシア産原油の輸出は好調だ。欧米の輸入減少を補って余りある量の原油が、インドや中国に輸出されている。4月26日のデータでは以下のようになっている。

<欧米への輸出量>

・アメリカ:-83%
・フィンランド:-81%
・ドイツ:-79%
・イギリス:-70%

<アジアへの輸出量>

・インド:8.4倍
・トルコ:2.4倍
・中国:1.13倍

全体では、すでに4月の段階で、昨年の平均輸出量と比べても7%も増加している。さらに折からの原油価格の高騰もあって、ロシアは欧米の制裁の痛手は受けていない。5月には、さらにこの水準よりも原油の輸出量は増えているということだ。

Next: 中国との貿易額は急増へ。取引に使われるルーブルの価値も健在

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