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次々と摘発「給付金詐欺」の残虐さ。本当の弱者がセーフティネットを奪われていく=鈴木傾城

「弱者なりすまし」をする悪人の罪は非常に重い

「遊んで暮らしたい」「働きたくない」「もらえるものは騙してでももらえばいい」と考えて、持続化給付金や生活保護などのセーフティーネットを悪用する人が次々と出てきたらどうなるのか。

すでに悪用や詐欺は毎日のようにニュースになっているのだが、これからもそんな事件が大量に出てくると、このセーフティーネットは最終的に崩壊してしまうことになるだろう。

不正受給は一部なので制度がパンクしてしまうことはないとしても、こうした制度が不正受給の温床になっていると認識されれば、世間の目は厳しくなる。それこそ、「我々の税金をそんなふうに使われるのはやりきれない。そんなセーフティーネットは無用だ」という意見が増える。

実際、持続化給付金や生活保護の不正受給が報道されるたびに「もう、こうした制度は廃止してしまえ」と主張する人が大勢出てきて、一定の賛同が生まれる。

常識と良識を持った人間であれば、「自分が不正をすることによって本当に生活保護を必要としている人が迷惑を受ける」と考えて不正から距離を置く。

しかし、「働かないで生活保護をもらって贅沢する」という人間は少なからず存在する。「他人に井戸を掘らせて自分はその水を飲もう」と考える浅はかな人間は社会の底辺には一定数いるのだ。

本来はもらえる資格などない人間が、セーフティーネットの抜け道を見つけて悪用するようになると、普通の人はそのセーフティーネットが弱者には大切なものであると分かっていても、割り切れない気持ちが芽生える。

だからと言って、システムを厳格なものにすると、今度はもらえるはずの「本当の弱者」までが締め出されることになる。悪用する人間たちは少数かもしれないが、その少数のルール違反で、本当の弱者が困窮することになる。

そういう意味で「弱者なりすまし」をする悪人の罪は非常に重い。

国民はむしろ「自助」で生きていかなければならない

持続化給付金や生活保護などのセーフティーネットを貪り食う「弱者なりすまし」は、そのセーフティーネットを破壊してしまう可能性もあるという意味で、本当に危険な存在である。

生活保護を受ける人たちの多くは貧困を這い回って苦しい思いをしており、救済が必要な人たちだ。だから、正常な社会は惜しみなく彼らを救済する。

そこに本当の貧困でない悪人が「なるほど、貧困のフリをしたら金がもらえるのか」と考えて、セーフティーネットにダニのように寄生する。「社会の善意」を食い物にする。

こんな不正がまかり通っていく社会になると、誰もが「弱者」を胡散臭い目で見るようになり、弱者を救済しようとする意欲も消えるし、弱者を守ろうとする気力もなくなる。

結果的に、社会は弱者を放置するようになり、セーフティーネットも社会から消えていき、底辺は荒廃した中で放置されるようになっていく。

そうならないためには、どうするのか。

もちろん、「弱者なりすまし」をピンポイントで摘発して排除するのは非常に重要だ。しかし、それだけでは足りない。「弱者なりすまし」を排除するのと同時に、「自立や自助(自分で自分を助けること)は素晴らしいこと」という常識や態度がきちんと身につくような社会にしていくしかない。

ある政治家は「自助」を強調して「国民を見捨てるのか?」と批判されたことがあったが、自助は別に悪いことではない。弱者を救済する使命を持つ政治家がそれを強調したら問題が発生するかもしれないが、国民はむしろ「自助」で生きていかなければならないのは当然のことだ。

セーフティーネットは存在しなければならず、病気や不運な状況によって経済的に危機に陥ったら誰もがセーフティーネットを利用できる環境は必要だ。しかし、すべての国民が自立も自助も努力もしないで最初からセーフティーネットを頼ったり、不正をして金を引き出すのは違う。

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