日本は大丈夫なのか?
このような状況なので、近い将来日本でも本格的な食糧危機が起こり、我々の生活基盤が根底から覆されるのではないかという恐怖さえ感じる。我々の周囲でもさまざまな生活物資が急速に上昇するのを感じる。
そのような可能性はあるのだろうか?
ところで、食糧危機には2つの異なったタイプがある。1つは、食糧の国際価格の高騰から国内の物価が高騰し、食糧が買えなくなるる状態である。これは、食料の供給はあるものの、これを買うことができない状態である。もう1つの食糧危機は、供給の絶対的な不足や、物流が寸断され、食糧そのもののが入手が困難になる状況だ。
言って見ればこの2つは、前者が食料は十分にあるものの価格が高い状態であるのに対し、後者は食料そのものがなくなる状態である。食料危機を語る場合、この2つを分けて考えなければならない。
周知のように、日本の食料自給率は低い。2020年に発表された最新のデータでは、わずか37%しかない。しかし、意外に思うかもしれないが、2020年に「国連食糧農業機関(FAO)」がまとめた113カ国の食料安全保障状況を調べたデータでは、日本は9位とランクが高い。これは100ポイントを満点とし、食料価格、値ごろ感、食料資源、安全性、品質などの指標で比較したランキングだ。以下のようになっている。このデータは第647回の記事でも紹介した。
1)フィンランド 85.3
2)アイルランド 83.8
3)オランダ 79.9
4)オーストリア 79.4
5)チェコ 78.6
6)イギリス 78.5
7)スエーデン 78.1
8)イスラエル 78.0
9)日本 77.9
10)スイス 77.7
11)アメリカ 77.5
12)カナダ 77.2
これを見ると、一般のイメージとはかけ離れているので、かなり驚くかもしれない。食料安全保障の全体的な評価では、日本はスイス、アメリカ、カナダよりも高い評価なのだ。
その理由は、日本の低い食糧自給率は、政府の減反政策によって人為的に作られたものだからだ。もし政府が減反政策の廃止を決定すると、コメの生産は増大する余地がかなりあり、食料自給率の引き上げが潜在的には可能だ。
コメは減反で500万トンから600万トン程度減産しているので、これを止めると日本の食糧自給率は100%に近づくと見られている。
さらに、これも第647回の記事で指摘した点だが、いま日本では、年間600万トンにのぼる食品ロスが出ている。これは食べられるのに捨てられた食品のことである。これは毎日10トントラック、1640台分の食品を廃棄していることになる。
これを軽減すれば、日本が食糧不足に陥ることはまず考えられない。