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「いきなり!ステーキ」創業社長が辞任し長男が世襲。隆盛と衰退を招いた独裁体制は継承される?その試金石となる例の“怪文書”の今後

「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスの名物創業社長、一瀬邦夫氏がついに社長を辞任したと報じられている。

報道によると、8月12日の取締役会で一瀬氏から「近年の業績不振の経営責任を明確にする」という社長辞任の申し出があり、これが受理されたとのこと。後任の社長には、一瀬氏の長男である一瀬健作副社長が就任するという。

一瀬邦夫氏がペッパーフードサービスの前身である有限会社くにを創業したのは1985年のこと。その後は「ペッパーランチ」「いきなり!ステーキ」を立ち上げ、それらの全国展開に成功したものの、アメリカ事業の失敗にくわえ、国内でも急激な出店が仇となり収益力のダウンを招くことに。さらに新型コロナの感染拡大なども、経営難に拍車をかける格好となっていた。

社長退任と同時に株主優待の廃止も発表

2019年には全国47都道府県に500店近くまで拡大したものの、直近22年6月末時点では42都道府県212店と、昨今の大量閉店により店舗数が最盛期の半分以下となっている「いきなり!ステーキ」。

ただ、このように不採算店を整理した甲斐もなく、ペッパーフードサービスが12日に発表した今年6月までの半年間の決算は、8億円余りの最終赤字に。さらに今年1年間の業績も最終黒字の予想を下方修正し、2年ぶりの最終赤字となる見通しだという。

2021年12月期の営業損益では、約3億円の黒字に転換したことが話題となった同社だが、これは都からコロナ対策の時短協力金を得たことが大きく影響していたようで、経営難の状況は相変わらずといったところのようだ。

そんな不採算店の大量閉店以外にも、経営立て直しのために様々な策を講じてきたペッパーフードサービス。なかでも20年には、経営状態が比較的堅調だった「ペッパーランチ」事業を売却し、「そっちを売るんかい」と大いに話題になったことも記憶に新しい。

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また近年では、店内で利用できるクレカや電子決済の種類がどんどん少なくなっていることも話題となり、利用者の間からは「手数料の支払いにも窮しているのか」といった心配の声も。さらに今年6月には、従業員に対して「料理用ビニール手袋は片手だけ着用して調理するように」という、かなり無茶な指令が出ていたことも発覚するなど、究極ともいえる経費削減策を従業員に強いていたようだ。

そして、今回の一瀬邦夫氏の社長退任と同時に発表されたのが、これまで100株以上を保有する株主に対し、保有株数に応じて優待食事券か自社商品を年2回贈呈していたという株主優待の廃止。「肉マイレージ」という独自のポイントシステムを改悪し、それまで熱烈に支持してきた常連利用者らの大量離反を招いたこともあった同社だが、今回の優待改悪では株主を大いに怒らせる事態になっているようだ。

名物社長の退任で取沙汰される「怪文書」の今後

このように近年の「いきなり!ステーキ」の経営難は、コロナ禍やミートショックなどといった如何ともし難い要因もあるいっぽうで、同社による明らかな失策によるところも多く、今回のタイミングでの社長交代は、たとえ一瀬邦夫氏が創業社長という立場だったとしても遅きに失したのでは……といった反応が大半。

いっぽうで、名物社長として知られていた一瀬邦夫氏の退任によって、今後どうなるのか取沙汰されているのが、これまで店頭に不定期で張り出されていた社長直筆のメッセージだ。

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SNS上などでは「怪文書」とも呼ばれているこの直筆メッセージ。話題になり始めたのは、「いきなり!ステーキ」の経営難が表面化した後の2019年末頃からで、その後も事あるごとに更新されている。

その内容は端的に言えば、いかに「いきなり!ステーキ」が同業他店と比べて素晴らしいかを訴えるものなのだが、その文章からある種の傲慢さを感じ取る向きも多いのか「上から目線」との指摘が多数。また何よりも、筆書きかつ長文というその張り紙は店頭で異様な存在感を放っており、逆にこれで客離れをさらに招いているのでは、といった声も少なくなかったのだ。

数年で一大チェーンを築き上げた敏腕・剛腕ぶりが過去には大いに評価された反面で、最近では独善的・独りよがりな経営との批判も多かった一瀬邦夫氏。次期社長は氏の長男ということでいわゆる世襲なのだが、2代目も先代同様の独裁路線を継承するのか否かは大いに気になるところ。一瀬邦夫氏のワンマンぶりを象徴するもののひとつだった、件の「怪文書」が今後再開されるのかどうかも、その試金石のひとつとなりそうだ。

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