左脳的経営の功績と限界
業績が苦しいというのは、業界全体の話だと思います。
しかしスシローに限って特に言えることは、プロ経営者が数字を重視して、ゴリゴリやってきた結果起きたという部分があると思うのです。
プロ経営者がやることは、当然優れていて業績を上げるということに関しては、非常にふさわしいと思います。
しかし、一方でいろんな問題点を抱えています。
ちなみにこのプロ経営者がやってくる経緯は、一般的にMBOをされたケースが非常に多いです。つまり、ファンドがその会社の株を買って、1回その会社を(上場していたものを)上場廃止にしてしまいます。
その後、経営改善を行って、再上場する。再上場する際に、上場廃止時に買った価格よりも高い価格で売れれば、その分のリターンを得られるというのがMBO、ファンドのやり方です。
そこで経営改善をするため、こういった左脳的というかコンサルタント出身だったりするプロ経営者が入ってくることが多いです。
彼らは非常に数字に強いので、特に再上場だったり他の会社にバイアウトをするときに、高く売れるための数値を作り上げることは得意としています。
水溜氏、今回のスシローの社長も同じような流れで入ってきています。スシローもかつてMBOして再上場した企業です。
なぜそういった企業でこういった不祥事が発生しやすいのかというと、何より数字に落とし込む経営というのは論理的であり即効性も高いです。
しかし一方で、やり方としては見ればわかる部分があるのです。従って真似されやすいという側面があります。
回転寿司という分野に関しても、スシローが最初、先進的なことをやるんですけれども、はま寿司やくら寿司もそれを見て、やはり真似することができてしまうわけです。
見ているデータは大体一緒でしょうから、それを分析すればできてしまう。だから競争が常に激しくなるというところがあります。
またこの数字が絶対なので先ほどの話、人間の気持ちや突発的な事象というのをあまり組み込まずに考えてしまうケースが多いです。
ゆえに現場は、てんやわんやっていうことも少なくないと思います。そういった中で従業員のモチベーションを管理・維持することは、この管理手法だけでは難しいんじゃないかなと考えられます。
実際に今回のスシローに関しても、現場だったりとか下部からの伝達がうまくいかなかったというようなことがあるのではないかと思います。
また、プロ経営者がいるうちはいいんですが、その後引き継ぐ人がいなかったら、続けていくことが難しくなってくるのです。
この数字で細かくやっていくというのは、難しいところがあって、ちょっと狂うと一気にガタガタと崩れてしまう可能性があるわけです。
プロの経営者というのが常に居続ける必要があるというわけです。
果たしてどれだけそういう人材がいるかというのは、その企業の成長にとって大きな鍵になってくるわけです。