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SBテクノロジー、エンタープライズ・公共分野を伸長させ、第4次中期経営計画の3年間で営業利益を1.6倍の80億円へ

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2022年9月10日にログミーFinance主催で行われた、第41回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第2部・SBテクノロジー株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

第41回 個人投資家向けIRセミナー

岡崎正明氏(以下、岡崎):みなさま、こんにちは。SBテクノロジーCFOの岡崎と申します。本日は、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。私からSBテクノロジーの事業と成長戦略についてお話しします。

SBテクノロジーという社名を初めて聞かれる方もいらっしゃると思いますので、親会社であるソフトバンクとの関係や当社の強み、および成長戦略について知っていただければと思います。

本日のご説明

岡崎:本日は「SBテクノロジーの概要」「成長戦略と取り組み内容」「株主還元」の3点についてご説明します。

SBテクノロジーについて

岡崎:最初に、SBテクノロジーの概要です。当社SBテクノロジーは、ソフトバンクを親会社に持ち、ソフトバンクグループにおいて、ICTサービスの中核を担っている企業です。

代表取締役社長である阿多は、日本マイクロソフトの社長を務めた後、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)の取締役として情報システム部門等を統括しており、2012年6月に当社社長に就任しました。

SBテクノロジーの経営体制

岡崎:スライドは当社の取締役のスキルを表したスキルマトリックスです。取締役9名それぞれが多様な経験とスキルを持ち、その知見を活かして経営に参画しています。また、9名中5名が社外取締役となっています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):社外取締役は「IT」「経営知識」が共通項となっています。社外取締役のさまざまな知見により、多くのアドバイスや意見があると思いますが、経営にプラスになった一例があれば教えてください。

岡崎:管理会計上の段階利益や投資回収基準に対する考え方、人員の内外比率などについて指摘を受けました。

従来の管理方法に慣れ親しんでしまっている面もあり、当たり前になっていたことに対して指摘をいただくことは、新たな気づきを得るきっかけになったと感じています。

新任執行役員と社員育成

岡崎:若手であっても実力があれば積極的に役員登用を行っており、本年度は新任執行役員として40代の社員を2名登用しました。また、社員に実力を付けてもらうため、教育投資も積極的に行っており、重要資格取得者も年々増加しています。

これらを背景に、社員の年間平均給与も増加しています。また、事業拡大に合わせて積極採用を行い、社員数・外部パートナー数ともに大きく伸ばしています。

坂本:外部パートナーが800名から3,000名まで増えている理由を教えてください。

岡崎:ソフトバンクと連携して、第3次中期経営計画の際にベンダーマネジメント案件を推進し、その結果、パートナー数が拡大しました。それらのパートナーはソフトバンクの事業だけではなく、公共やエンタープライズの領域にも展開し規模を拡大することができました。

これまでの歩み

岡崎:沿革についてご説明します。当社は1990年に設立し、1999年に株式を店頭公開しました。2006年には東証一部へ上場しています。そして、2012年に現在の社長の阿多が代表取締役CEOに就任し、「大きく成長する」という目標を掲げました。就任後は、3年ごとに中期経営計画を立て、定めた目標を追求、達成しています。

2013年からスタートした第1次中期経営計画では、クラウドとセキュリティを注力領域として定めました。また、会社を大きく成長させるために、社員数を400名から約800名へと倍増しています。

次に、第2次中期経営計画において、新規案件はクラウド関連案件に集中するとともに、利益率の低い機器販売のビジネスを縮小するなど、事業の中身を転換しました。世間にクラウドが浸透する前から注力して取り組んでいたこともあり、マイクロソフト社のクラウド導入実績No.1のポジションを確立しています。

そして、第3次中期経営計画では、クラウドやセキュリティで培ってきた技術をサービス化し、展開しました。その結果、第1次から第3次中期経営計画の9年間で、売上高・営業利益を約3.5倍に伸ばすことができています。

今期からスタートした第4次中期経営計画においても、クラウドおよびセキュリティの技術を活かし、企業や官公庁向けのDX支援をさらに推進するとともに、セキュリティサービスを中心としたサービスの拡販にもますます力を入れようと考えています。

これらを通じて、会社をさらに大きく成長させるとともに、高付加価値サービスの比率を高め、利益率の向上も実現していきます。

事業内容 -クラウドとセキュリティ-

岡崎:SBテクノロジーで磨いてきた強みは、クラウドとセキュリティです。それぞれの領域について、多くの導入事例から外部企業にも高い評価をいただいています。

例えば、クラウド領域において、クラウドソリューション導入実績は1,000社以上あり、マイクロソフト社を中心に、パートナー企業として最高ランクの評価を得ています。

また、セキュリティ領域においても、200社超の企業、12県、405市町村の自治体で当社のセキュリティ監視・運用サービスを活用いただいています。

坂本:導入実績について、地方公共団体に強い理由があれば教えてください。

岡崎:2016年に、自治体情報セキュリティクラウドを初めて導入し、その時は1ベンダーとして最多となる4県の案件を獲得しました。この4県について、5年間安定したサービスを提供しており、その実績が評価されたと思っています。

また、このたびサービス型の情報クラウドセキュリティサービスを提供することで、1県あたりのコストをさらに下げることができたため、品質は担保しつつ、価格面での優位性を高められたと考えています。

業績推移

岡崎:スライドのグラフに記載していますが、第1次から第3次の9年に及ぶ中期経営計画期間では、売上高・営業利益ともに約3.5倍と、大きく成長しました。

坂本:第3次中期経営計画で、通信事業分野が大きく伸びたということですが、第4次中期経営計画は安定成長になっています。この背景を教えてください。

岡崎:第3次中期経営計画では、ベンダーマネジメント案件を拡大する施策を実施しました。その拡大施策も一巡し、今後は収益性の改善へ舵を切るため、第4次中期経営計画では売上高を安定的に成長させたいと考えています。

坂本:売上は伸ばすものの、利益をしっかり積み上げる体制を構築するということですね?

岡崎:おっしゃるとおりです。

第4次中期経営計画 / FY24 経営指標

岡崎:今期(2022年度)から3ヶ年の第4次中期経営計画においても、「大きく成長する」という方向性はもちろん継続します。その上で、最終年度で実現すべき経営指標として、スライドに記載した3点を掲げています。

まず、「営業利益80億円」についてです。前期の営業利益は約51億円ですので、3ヶ年で約1.6倍に成長させていきます。また、本中期経営計画においては、営業利益を伸ばすことはもちろんのこと、営業利益率についても、現状の7パーセント台から9パーセント台に引き上げていきます。

さらに、鍵となるクラウド・セキュリティ&サービスの売上高を、500億円超まで高めていきます。

主な顧客基盤

岡崎:主な顧客基盤です。メインは通信、エンタープライズ、公共の3区分で、ソフトバンクとのシナジーを活かしつつ、特にエンタープライズ・公共の分野を、本中期経営計画期間に大きく伸ばしていきます。

エンタープライズ・公共分野の2領域をどのように伸ばしていくかについては、この後ご説明します。

エンタープライズ- ソフトバンクグループ各社

岡崎:最初に、エンタープライズの例として、ソフトバンクグループの一員であるZホールディングスに対してのビジネス拡大についてご説明します。

「Yahoo!」「LINE」に「PayPay」を加えた経営統合に伴うシステム統合や、事業領域の特性として、セキュリティがさらに重要となっています。特に、デジタルプラットフォーム事業者にとっては経済安全保障の観点もありますので、そこを支援していきます。

また、それぞれの事業特性に応じたセキュリティはもちろんですが、グループ全体のセキュリティガバナンスなども統合されていくと思いますので、全体を支援していきます。

エンタープライズ -その他大手企業

岡崎:エンタープライズ領域のソフトバンクグループ以外の企業向けビジネスについてです。コロナ禍前、特にDX以前は、社内システムを守るセキュリティ対策が中心でしたが、各社がDXを推進しクラウド利用が促進されたことで、情報資産が外部に出てしまう恐れが発生し、それに沿ったセキュリティ対策が必要となりました。

また、自社の社内情報を守るだけでは十分ではありません。大手企業は子会社を多く抱えており、グループガバナンスとしてグループ全体のセキュリティを守る必要があります。さらに、大手製造業のサプライチェーンが攻撃されたことも記憶に新しいですが、事業継続のためには、サプライチェーンを含めたセキュリティの強化が必要となります。

現代ではそれらの攻撃から守るべき領域が広がっており、そこにSBテクノロジーのセキュリティ対策サービスが拡大する機会も広がっていると認識しています。

増井麻里子氏(以下、増井):今後、セキュリティ対策については、技術要求が高まっていくと思いますが、プレイヤーも限られていきますか?

岡崎:市場の背景として、セキュリティ対策に対応できる人材不足が大きな課題だと捉えています。そのような中で、企業ごとにセキュリティ対策のために人材を採用し、自社のセキュリティ対策を運用していくのは非効率であり、リソースも課題になるため、必要な対策が打てなくなるのではないかと考えています。

このような課題を解決する上でも、セキュリティ専門の人材育成および運用の共通化を含めて、全体的に提供することが必要だと思います。

専任セキュリティアナリストの育成には、時間と環境、経験が必要です。我々は、法人、ソフトバンク関連企業、自治体など多くの顧客を持っていますので、さまざまな対策をとることができ、それがアナリストの育成という点では、他社と差別化が図れる部分だと思っています。

セキュリティ監視センターのリニューアル

岡崎:セキュリティサービスの需要拡大に合わせて、今年7月に「セキュリティ監視センター」の面積を2倍に拡張するリニューアルを行いました。

さらに、AIだけにセキュリティ対策を任せることはできませんので、そこに配置する人材も必要です。現在、セキュリティアナリストは約80名いますが、数年間で150名規模へ拡大したいと思っています。

また、グローバルの監視拠点、サポート拠点について、この3年間は新型コロナウイルスの影響もあったため、細々と行ってきました。しかし、今年からは一層強化し、監視拠点を拡大していきます。これにより、グローバルに展開している製造業からのご要望にも対応できると考えています。

公共:デジタルガバメントへの支援

岡崎:公共事業についてです。政府は過去から「e-Government」などを進めていましたが、昨年度、みなさまもご存じのデジタル庁が発足しました。政府は2024年度末までに申請手続きの9割をデジタル化すると掲げています。これに対し、農林水産省は先行して取り組みを行っており、我々がそれをサポートしています。

デジタル庁の河野大臣も、「農林水産省の職員がデジタル庁に行って、デジタルガバメントを推進したらよいのではないか?」と言うほど、農林水産省のデジタル化はかなり進んでおり、農林水産省は今年度でデジタル化をほぼ終える見込みなのですが、そこまでには約3年掛かっています。

そのため、2024年度末から逆算すると、他の省庁にも動きがあると考えられますし、当社もそちらの方向へ動いています。

坂本:御社から見ても、農林水産省のDXは「かなりよい」というレベルなのでしょうか?

岡崎:そうですね。中心となる方をしっかりと据えて、推進体制も整えています。すべてを我々任せにするのではなく、自分事として真摯に向き合い、取り組まれていたと聞いています。

公共:自治体ビジネスの展開

岡崎:自治体向けの情報セキュリティクラウドについてご説明します。自治体情報セキュリティクラウドの受注件数について、5年前は4県でしたが、第2期である今回は47都道府県中12県で受注し、約25パーセントのシェアを獲得することができました。

こちらは今後5年間のプロジェクトになりますが、セキュリティ支援はもちろんのこと、そこにとどまらず、それらの自治体に向けてDXを推進するサービスを展開する予定です。

坂本:「12県を受注」とのことですが、今後どのくらいまでシェアが伸びると言いますか、増えていくイメージでしょうか?

岡崎:更新の入札は概ね終わっているため、現在は12県で約25パーセントのシェアとなっています。

坂本:おそらく4年、5年のタームで入札があると思うのですが、今後も獲得したいところですよね。

岡崎:そうですね。

坂本:将来は、契約が切れた時に入札になる可能性があると思います。入札については、随時契約、または新規での入札が行われるのでしょうか?

こちらは参入障壁になるかと思いますので、どのようなスキームになっているのか教えてください。

岡崎:セキュリティクラウドの乗り換えについてですが、「個別構築型」「サービス型」では大きく異なります。「個別構築型」について、現在のサービスは最新のスペックかもしれませんが、5年経つとかなり老朽化してしまうため、更新の必要が出てきます。そのため、再度、入札が始まるということになります。

しかし、我々が今回始めた「サービス型」については、常に裏側でアップデートすることが可能です。そのため、5年後でも同じシステムを使うことができ、更新の必要がない構造になっています。

坂本:そのような運用で進めると、イメージとして自治体に毎年セキュリティ化の予算を用意してもらえれば、随時契約ではないものの更新できるということでしょうか?

岡崎:もちろん確定ではありませんが、それは可能だと思っています。

坂本:そのような体制が整うシステムになっているということですね。

通信:ソフトバンクとのシナジー

岡崎:通信セグメントについてご説明します。ソフトバンクに対してはシステム開発など、直接支援している部分が大きいのですが、そこにとどまらず、DXを共に推進する協業および販促パートナーとして、エンタープライズ・公共領域への営業活動の推進をさらに強化していきます。

例えば、ソフトバンクが本社を竹芝地区に移転した際には、スマートシティ関連で協業しました。先端技術へのチャレンジを継続していますが、ここで得た知見を他のお客さまに向けて展開したいと思っています。

他方で、ソフトバンクは多くの法人の営業部隊を抱えているため、当社のサービスを企業や自治体に届けるパートナーとして、さらに連携を加速・強化していきます。

持続的な成長に向けた業務提携

岡崎:我々は、持続的な成長に向けた人材の確保および強化が急務となっています。その対策のための強力な手段として、7月19日にModis社と事業提携しました。

Modis社は、世界最大の人材派遣会社であるアデコグループの中で、特にIT人材に特化している会社です。国内で約9,000名のエンジニアとコンサルタントを有しており、アデコグループ内の連携による多種多様な人材サービスの提供と、各専門分野における技術研修で、豊富な実績があります。

業務提携の目的は大きく2つあり、1つ目は「人材供給」です。本提携により、我々の事業に即した訓練を受けたModis社のITエンジニアを計画的に供給していただきます。これにより、従来の採用活動に加えて、即戦力のITエンジニアの確保が可能となり、これまで以上に優秀なITエンジニア人材を確保し、強化することができます。

2つ目は「人材教育」です。Modis社は年間で2,000人弱の採用を行っており、豊富な教育プログラムを持っています。この教育プログラムを我々がカスタマイズし、当社社員のリスキリングおよび新卒・中途採用者に対する効率的な即戦力化が図れるものと考えています。

増井:Modis社との提携ですが、現時点で教育も含めいろいろと中身が濃くなっていると思います。将来的にはどのような内容で提携されていくのでしょうか?

岡崎:私見も含めてお答えしますが、現在の業務提携の中身は「人材供給」「人材教育」だとお話ししました。「人材供給」のところで1つ付け加えると、当社向けにエンジニアを派遣していただくだけではなく、さらによい方については、一定割合当社に転籍可能な、いわゆる「紹介予定派遣」をプログラムに加えて組むことになっています。

また、Modis社の親会社は世界最大の人材派遣会社のため、この業務提携にとどまらず、将来的には、海外人材の活用についても推進していきたいと考えています。

第4次中期経営計画 成長の方向性

岡崎:第4次中期経営計画の成長のキードライバーは、クラウドとセキュリティです。それらについて、特にエンタープライズ・公共のお客さまに向けて提供していきます。最終年度である2024年度には営業利益80億円、営業利益率9パーセント台を目指して推進していきます。

第4次中期経営計画 / FY24 経営指標

岡崎:再掲となりますが、新中期経営計画の経営指標は、中計最終年度の2024年度において営業利益80億円、営業利益率9パーセント台、クラウド・セキュリティ&サービスの売上高500億円超です。これらの達成のために、全社一丸となって推進していきます。

坂本:人材を活用する仕事のため、営業利益率9パーセント台に引き上げるのは大変だと思います。おそらく、サービス部分でかなり稼がなければならない部分もあると思いますが、この9パーセント台を達成するための施策のようなものがあれば、教えていただけたらと思います。

岡崎:施策はいくつか考えています。1つ目は、事業ポートフォリオを変えて、セキュリティを中心とした自社サービスを拡大していきます。

2つ目は、横展開型のソリューションで効率よくビジネスを推進します。3つ目は、先ほどお話ししたModis社との連携、海外人材の活用なども含め、原価構造を変えていきます。

坂本:クラウド・セキュリティ&サービスはかなりの売上になると思いますので、詳細を教えていただければと思います。

岡崎:DX推進のためのセキュリティを含めたインフラ支援、顧客が自らDXを自走していくことのできるプラットフォームの提供、さらにIT教育といった環境整備が重要だと考えています。

例えば農林水産省では、当社が構築したプラットフォームを使用した上で、職員が自ら申請フォームを作成しており、これはITリテラシーの向上にもつながると考えています。

SBテクノロジーのサステナビリティ

岡崎:サステナビリティについては、7つの基本方針を定め、マテリアリティを特定して進めています。

「クラウド利用はオンプレミスに比べ、約8割電気効率がよい」というデータもあるため、移行支援を行うことで、環境および本業双方へ貢献していきます。

カーボンニュートラル宣言

岡崎:先日行った第1四半期の決算発表と併せて、カーボンニュートラル宣言を行いました。2030年までに「温室効果ガス排出量実質ゼロ」を実現していきます。

お客さまを通じた環境への配慮はもちろんのこと、当社としてもこのように宣言し、率先して取り組んでいきます。

株主還元

岡崎:株主還元についてご説明します。 当社は2018年度から前期まで4期連続の増配を行っています。2019年度からは中間配当も行い、また現在も行っている自己株買いも含めて株主還元の充実を図っており、今後も続けていく予定です。

具体的な指標は明示していませんが、ここ数年の傾向で、配当性向は30パーセント強の水準で推移しています。株価動向等も考慮しながら、今後は自社株式の取得等についても、継続的に検討していく方針です。

増井:自社株買いを行っても、今の配当性向は維持されていくのでしょうか?

岡崎:そうですね。現時点で明確な目標は定めていませんが、ここ数年の配当性向は33パーセント前後で推移しています。

1つ言えるのは、SIという業態は利益的にも安定しているため、短期的な要因で減益になったとしても、即座に減配するという想定はしていません。

株価推移

岡崎:株価推移ですが、9月9日の終値が2,457円で、ここのところ2,500円を挟んだ値動きとなっています。PERも14倍台ですので、ここ数年の成長と、新中計における成長戦略の継続性を考えると、個人的に現状の株価はかなり割安な水準ではないかと感じています。今後の成長にもぜひ期待していただきたいと思っています。

坂本:確かに株価の評価は、少し低く感じます。「そのためのIR活動だ」という話もあるとは思いますが、足元の業績も悪くないですし、実際に少し利益が落ち込んだのも、特需が剥がれた部分だと思います。

今後、中期経営計画を達成することでよい方向へ動くかもしれませんし、そのあたりもまた継続していただけたらと思います。

坂本:また9ページを見ると、足元もずっと成長していますね。「今後の中期経営計画で利益を伸ばしていく」という話がありましたので、その部分が達成できればかなりよいと思います。

売上成長と利益成長を評価した部分が株価として高値で表れたところだと思いますので、今後の利益成長で80億円を点と線で結ぶことができれば、個人的に非常におもしろいのではないかと思っています。

SBテクノロジーのまとめ

岡崎:本日のまとめになります。繰り返しになりますが、我々の特徴はクラウドとセキュリティの技術に強みを持つ東証プライム上場企業であることです。約10年間で売上高・営業利益は3.5倍に拡大しました。さらに、本年度から始まる中期経営計画の3ヶ年の間に営業利益を1.6倍に拡大させ、営業利益率もきちんと高めていきます。

成長戦略については、ソフトバンクとのシナジーを活かしながら法人・公共における顧客のDXを支援し、顧客とともに成長し続ける企業になりたいと考えています。

第4次中期経営計画のゴールとして、営業利益80億円、営業利益率9パーセント台、クラウド&セキュリティサービスの売上高500億円超に持っていくことを目指していきます。

ご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:ソフトバンクグループとの関係について

坂本:「親子上場について、ソフトバンクグループとの関係と展望を教えてください」というご質問です。

岡崎:現在、株式の保有比率を含めて親子関係を変化させることは考えていませんし、そのようなお話は聞いていません。

質疑応答:入札のリスクについて

坂本:「公共・自治体の顧客については入札ですので、契約を失うリスクがあるのではないでしょうか?」というご質問です。僕もおうかがいしましたが、もう少し教えていただけたらと思います。

岡崎:ご指摘のとおり、入札のため一発勝負ですので、契約を失うリスクはあります。ただし、農林水産省案件は開発から運用まで一貫して手がけているため当社に強みがあります。また、情報セキュリティクラウドは5年契約ですので、非常に安定的です。

公共ビジネスの開発は一般的に利益率が低いですが、その後の運用まで受注できれば、安定して利益を確保できるプロジェクトが非常に多いと認識しています。

坂本:確かに、クラウドのよさとして運用中にアップデートできることはかなり大きいですね。オンプレミスのパッケージの場合は「少し変えてください」と言っても数百万円かかりますので、こちらは非常によいと思います。全体的なコスト削減にもなりますし、効率化にもつながりますよね。

岡崎:そのとおりだと思っています。

質疑応答:競合について

坂本:「DXやセキュリティのマーケットを拡大していますが、競合も増えているのではないでしょうか?」というご質問です。自治体に絞っていただいてもよいですし、全体の仕事でも構いませんので、業界環境について教えてください。

岡崎:まず、我々が中期経営計画で伸ばそうとしているエンタープライズ・公共領域についてご説明します。

エンタープライズは、大きく分けてソフトバンク以外のソフトバンクグループ企業向けと、それ以外の企業向けの仕事があります。ソフトバンクグループ向けの仕事については兄弟会社でもありますし、全件獲得するつもりで取り組んでいきたいと思っています。

現状、Zホールディングスを含めてシェアは低い面がありますが、せっかくグループ企業になりましたので、きちんとコミュニケーションして、現状で他社に発注しているものをすべて我々に発注してもらう勢いで営業を仕掛けていきたいと考えています。

ソフトバンクグループ以外の企業についても、自社の営業努力も継続していきますし、先ほど少しお伝えしましたが、ソフトバンクの強力な法人営業を使って拡販していきたいと考えています。

坂本:現状でもお付き合いはありますよね。

岡崎:おっしゃるとおりで、さらに力を入れていきたいと考えています。もちろんこの領域の競合も多いことから、強力な営業力で打ち勝っていきたいと思います。

公共領域について、官公庁のDX関連や情報セキュリティクラウドに関しては、これまでの数年間の競争を経てプレイヤーがかなり限られてきたと感じています。だからこそ、我々も2期目で高いシェアを獲得できたと考えています。

今後も効率性をきちんと追求しながらコストを削減し、ソリューションによって、自治体向け・官公庁向けのプロジェクトを進めていきたいと思います。

坂本:ソフトバンクグループは、Zホールディングスも含めてグループ間の仕事が多い印象です。そこはきちんとアライアンスを組んで進めているのでしょうか? また、人的交流はあるのでしょうか?

岡崎:結論からお伝えすると、最近はソフトバンク会長の宮内謙が音頭を取り、ここ1年でグループシナジーを非常に強力に推進しています。我々もその流れに乗ってグループの仕事を行っていきたいと考えています。

質疑応答:農林水産省以外の中央官庁との取引の有無について

坂本:「農林水産省以外の中央官庁との取引はありますか?」というご質問です。お話しできる範囲でお願いします。

岡崎:農林水産省以外との取引もあります。先ほどお伝えしたとおり、農林水産省で先進的なDXの取り組みを行い、各官庁への横展開が進んでいるため、さまざまなところからお話をいただいています。

質疑応答:中央官庁への事業拡大について

坂本:「デジタル庁主導で、行政のシステム統合が行われるのではないかと考えています。その点について、他の省庁への事業拡大はどのように考えていますか?」というご質問です。

岡崎:デジタル庁がいろいろと整理しながら2024年末までの合理化、効率化、DX化の音頭を取っていますので、そこにアプローチしていきます。

同時に、予算は各官公庁で取っているところもありますので、そちらにも個別にアプローチしながら農林水産省で培ってきた我々のプロジェクト経験を正しくお伝えし、その横展開を図るべく進めています。

質疑応答:配当性向について

坂本:配当性向について、「これといって決まったものはなく、今までは30パーセント強です」とお話がありましたが、「配当性向が業界の中で低いと思いますので、見直していただけないでしょうか?」というご質問をいただきました。

これは自己株式を取得しているため、「総還元性向で見てください」ということでよいかと思います。配当性向をきっちり決める会社もありますが、そのような会社は自社株買いを行いません。

おそらくソフトバンクもそうだと思いますが、自社株買いを行う考えがあるからこのようなかたちになっていると思います。ですので、両方を進めて株主に還元するという意味かと思っていますが、そのあたりを教えてください。

岡崎:ご説明いただいたとおりです。配当性向のみならず、自己株式の取得や戦略投資など総合的に考えての株主還元だと思っています。結果として、ここ数年の配当性向は3割強を維持できていると考えています。

質疑応答:今期の業績について

坂本:「今期のガイダンスで、ライセンス料の上昇などの不確定な要素があったと思います。毎期に不確定要素が存在しますが、実際はどうなのでしょうか?」というご質問です。今期の業績についてお願いします。

岡崎:おそらく「営業利益は3ヶ年で1.6倍という目標の中、今年度の開示数値の伸び率が相対的に低いのではないか」というご指摘かと思います。実際にそのとおりで、今期は約5パーセントの伸びを想定しており、来期・再来期で20パーセント伸ばして、3ヶ年で1.6倍にする計画です。

今期の伸びを過去3ヶ年や将来2ヶ年と比べて小さく設定しているのには、大きく2つの理由があります。1つは、我々の創業事業に近いEC事業で、パソコンにインストールするセキュリティソフトの「ノートン」を代理販売していましたが、ノートンライフロックの方針変更により、日本においても彼らが独自でEC販売したい方針で、新規顧客に対する販売は彼らが行いたいというお話がありました。

既存顧客に対する継続課金の部分については我々が継続していきますが、そちらのほうが作業負荷も低いため、料率の見直しを一緒に行いました。ですので、前期は利益水準が約10億円ありましたが、今期は約4億円の減益影響があると考えており、そちらを計画に織り込んだことが1つの大きな要因です。

もう1つは、「我々は過去3ヶ年で約2倍に成長し、過去9年間では3.5倍に成長した」とお伝えしましたが、急激に成長させてきましたので社内のDX化が間に合っておらず、今後のさらなる成長のために今期は立ち止まって体制を構築しようと決めたことにあります。

そこに対しての社内のDXや、今後の営業戦略に合わせ、外部も含めた体制作りにコストと時間を使うことを計画に反映し、相対的に低い伸び率になっています。

坂本:お話の中にもありましたが、契約後に刈り取れる部分があるため、営業利益の伸びに注力していくかたちでしょうか?

岡崎:おっしゃるとおりです。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:経済安全保障の話題が出ましたが、防衛費の増加による需要などは想定されていますか?

回答:防衛費の増加による直接的な需要増は想定していません。さまざまな規制や制度に企業がセキュリティの面で対応するための支援が可能と想定しています。

<質問2>

質問:3月に続いて、8月にも障害が発生したと認識しています。また過去にも不正アクセスがあったこともあり、セキュリティが弱いのかなと思っていますがいかがでしょうか?

回答:自治体情報セキュリティクラウドのインシデントの件については、お客さまをはじめ株主のみなさま、多くの関係者のみなさまに多大なるご心配とご迷惑おかけし申し訳ありませんでした。

3月18日に発生したインシデントは緊急メンテナンス時の設定不備が原因となっており、8月8日の障害はネットワークを構成する通信機器の障害が原因となっています。どちらも発生原因はサイバー攻撃によるものではありません。

本件については深く反省するとともに、このような事態が発生しないよう再発防止策を進めていきます。詳細は、当社ホームページにてご説明していますので、ご覧いただければと存じます。

・2022年3月18日発生事象
当社が管理するメール中継システムによる外部メール不正中継について

・2022年8月8日発生事象
当社が管理する自治体情報セキュリティクラウドの障害について

<質問3>

質問:本決算時にガイダンスを出さなかったことについてです。ガイダンスの中身ではありません。上場企業として、ガイダンスを本決算時に出さないのであれば売られてしまうのは仕方がないところかと思います。それをもって足元の株価は割安と言われても説得力はありません。

回答:今期のガイダンスの公表が遅れたのは、EC事業における契約変更、および3月に発生した情報セキュリティクラウド関連のインシデントに関して、前期末時点では今期への影響が不透明な点があったためです。第1四半期中に影響について明確にした上で公表しました。

株主および投資家のみなさまにはご心配をおかけしましたが、第4次中期経営計画を着実に遂行し、さらなる成長を遂げることで、みなさまの期待に応えていきたいと思います。

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