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「宗教が差別を生む」元オウム上祐史浩が語る“宗教二世”問題の根深さ。宗教が力を失った日本はどこへ向かうのか?【後編】=鈴木傾城

カルトの本質は反社会的勢力か?

鈴木:そうなのです。今回の統一教会でもそうですが、信者から破産するまで金を吸い上げるという意味で、カルトはまさに反社会的な詐欺集団のように世間は捉えるようになってきています。カルトの本質は反社勢力なのでしょうか?

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上祐:カルトは単なる詐欺的な経済活動の集団かと言えば、やはり宗教だと私は思います。この点に関連して、彼らが違法行為を行なうのは、悪魔の支配下と見なす外的集団との「聖なる戦い」のための手段だと思います。外部社会から見れば悪いことですが、教団信者は、それを良いことだと解釈するので、ああいうことができてしまうのだと思います。

伝統的宗教も、キリスト教は、開祖や弟子が、既存社会と対立して磔になり、世界中を布教と称して植民地侵略をした。多くの宗教は、最初はカルト的な存在であり、歴史の中で社会に適応した。よって「宗教とは(社会的に)成功したカルト」という言葉もあります。

一般人の方は、宗教を歴史的に見ることは少なく、宗教は、「なぜ家族分断をするのか、戦争テロを起こすのか」と思うことが多いと思います。そして、「信仰の自由」は、カルト宗教の規制には邪魔だとは思う。しかし、カルトと宗教を区別するのは難しいという問題がある。そこで、統一教会は宗教ではなく、詐欺集団だから、信教の自由などはないと考えればいいと思う。しかし、これは、なにかすっきりしない状態ではないでしょうか。

鈴木:確かに一般人はもう宗教を信じていませんし、むしろ胡散臭いものだと思っていますね。

上祐:はい、そして、その点に関連して、私は新たに「宗教による差別」「宗教差別」という概念を提示したいと思います。宗教が、実は差別を生み出すという考え方です。まず、普通は、宗教差別と言えば、例えばユダヤ人を差別するように、特定の宗教集団を差別することを言います。

しかし、私が言いたいのは、そうではなくて、宗教が、その教義で社会を聖邪、善悪に2分して、邪悪とされた人たちを差別することです。

宗教が「差別」を生み出している

鈴木:社会が宗教を差別するのではなく、宗教側が社会を差別するということですか?

上祐:はい。例えば、ユダヤ教に限らず、多くの宗教画、この世界を、その信者、その宗教の選民と、そうでない非信者の2つに分けて、信者と非信者、選民と非選民に対する大きな評価と扱いの違いを昔から認めている面がある。

ところが、私たちの社会がその根本とする民主憲法は、みんなが平等ということを原則としている。階級も、人種も、性も、民族も、その違いで差別してはならない。人間はみな平等に生まれた、法の下に平等であるという原則ですね。だとすれば、宗教が、その教義で社会を二分化して、悪の集団を差別するということは、民主主義の平等原則に反したものではないでしょうか。

宗教が、自分の勝手な教義で、この社会を善と悪に分けて、善神とその救世主の集団と悪魔の支配下の人々との闘いだとなれば、社会を分断するだけでなく、宗教側は、悪魔との闘いには、霊感商法などの違法行為を用いても悪くはない、場合によってはテロや暴力も聖戦だということになる。悪魔との戦いを合法的にやれというのは心理的な矛盾がある。

だから、そうした宗教の教義は、民主主義の原則に明確に反するものであり、民主主義社会の元での信教の自由の概念の中には含まれないと言う、信教の自由の解釈の変更を行う改革が将来あってもいいのかと思います。少なくとも、宗教的な動機で違法行為を正当化することは、民主主義の法の下の平等の原則に反するのですから。

鈴木:確かにそうです。宗教の教義で違法行為が正当化されたら社会が壊れてしまいます。現に、それが起きているのが統一教会問題ですね。

上祐:今、統一教会の宗教二世の問題に関して、宗教虐待、宗教に基づく虐待という概念が広まってきました。これは、これまではなく、親が信者で、信仰で良かれと思ってやることに、国が介入することは、信教の自由のためになかなかできなかったようですね。しかし、今後は、他の児童虐待と同じく規制していく流れに今回なった。

同じように、宗教による差別は、性差別・人種差別と同じように、合理的な根拠なく人を差別することだとして、否定する流れが将来あってもいいように思います。

例えば、統一教会の教義においては、韓国に対して、日本は差別される立場にあるわけです。韓国はより心理に近いアダムであり、日本はアダムよりも先に悪魔に誘惑されたエバであり、アダムより汚れており、そのため、日本は韓国に献金して、贖罪をしなければならないという教義がある。実際には、これに加えて、韓国を併合した大日本帝国時代の罪を強調する反日的な教義、自虐史観の利用をして布教して信者を拡大してきた。

こうした差別的な心理状態にあるから、霊感商法で日本の一般の人からお金を騙し取っても悪くないということになると思います。救世主側の聖なる信者同士は助け合って、その逆に、信者ではない外部社会は悪魔側と見るので非常に厳しい対応になる。これは客観的には差別だと思います。つまり、宗教は、その教義に基づく差別意識があると思います。

具体的には、「自分たちが救世主側で、これは神の意志にかなった世界を作るための聖戦だから」、「外部社会は悪魔の支配下であり、悪魔と戦う上で手段を選ぶ必要はない」という論理になる。そのため、Qアノンで煽動された人は襲撃もするし、オウム信者はテロもやり、イスラム原理主義者は自爆テロをやる。統一教会は、人を殺さないが、経済的な違法行為を行ってきた面があると思います。

Next: もう宗教は役割を失いつつある。これからの日本はどこへ向かう?

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