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児童手当の“所得制限”はコスパ最悪の無駄制度。「金持ちに配る必要なし」と言うなら、金持ちへの課税を強化すればいい=塚崎公義

児童手当に「所得制限」は不要です。現在の制度では、親の所得が高いと減らされたり受け取れなかったりしますが、これではコストパフォーマンスが悪い。貧富の格差を是正するなら、金持ちへの課税をすれば良いのですから。

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プロフィール:塚崎公義(つかさき きみよし)
経済評論家、元大学教授。東京大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)、久留米大学商学部教授を経て2022年に定年退職。現在は経済評論家として執筆活動を行う。著書に『よくわかる日本経済入門』『大学の常識は、世間の非常識』『老後破産しないためのお金の教科書』など。

児童手当の所得制限は、コストに見合わない

児童手当は、親の所得が高いと減らされたり受け取れなかったりします。所得制限がかけられているわけですが、これはコストパフォーマンスが悪い制度ですね。

制限によって支給総額が大幅に減るならば意味がありますが、一部の高所得者への支給を減らしても、財政への貢献は小さいでしょうし、受け取る人が高所得者であるか否かを調べる手間もコストもかかります。

そんなことなら、所得制限を撤廃すれば良いのです。政府は所得制限を廃止する方向で検討しているようですが、ぜひとも実現して欲しいものです。

「財政赤字が心配だ」「金持ちに配る必要など無い」といった意見に対しては、別のところで金持ちへの課税を強化すれば良いのです。そうすれば、子どものいる金持ちは所得が増え、子どものいない金持ちは所得が減ることになりますから、少子化対策になるでしょう。

有効性はともかく、少なくとも政府が発するメッセージにはなるはずです。実際には、児童手当を考えて子どもの数を決める金持ちは少ないでしょうが(笑)。

ただ、所得制限を「高額所得者はダメ」から「低所得者だけ」に変更するなら、意味があるかも知れません。「産みたいけれど、金がないから諦めている」という非正規労働者カップルに「子どもが18歳になるまで毎月10万円支給する」と伝えれば、産む人も多そうだからです。実際には、所得に応じて支給額に差をつける等々の工夫が必要でしょうが。

「課税すべき金持ち」は高額所得者か資産家か

「金持ちに課税しろ」というと高額所得者を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、巨額の財産を持っている年金生活者は、低所得者で住民税を免除されているかも知れません。それを考えると、所得税の累進課税を強化するより、財産に課税する方が公平なのかも知れません。

理想を言えば、銀行預金等々をマイナンバーで管理して、国民が所有する財産を税務署が把握し、それに課税することが望ましいと思いますが、それが実現するまでの間は相続税と固定資産税の増税を次善の策と考えましょう。

相続税は「配偶者も子もいない被相続人の財産を兄弟姉妹が相続する場合には高い税率」が良いでしょう。子どものいない人が増えていますので、数十年経てば巨額の税収が得られるはずです。

被相続人の老後は、他人の子が支払った税金と年金保険料で養ってもらったわけですから、残った財産は子どもたちの世代に返す、という意味もあるわけです。べつに、「高い相続税律を避けるために子を産もう」と考える人が増えると期待しているわけではありませんが(笑)。

Next: 少子化は国難だ、という認識が重要。高齢者より子どもに税金を使いたい

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