オリンパス“だけ”下がる理由
<要因その1:そもそも割高だった>
まず考えられることは、単純に株価が割高だったからではないかということがあります。
PERを見ると8.1倍とあり、逆に割安なのではないかと思ってしまいます。しかし、このPERは気をつけて見る必要があります。なぜなら、今期は「特別利益」が計上されているからです。

オリンパス<7733> 業績(SBI証券提供)
このように、当期利益が営業利益より大きくなっている時は、何か特別な事情があったと考えるのが自然です。PERは今期業績予想の数字から算出しているものですが、当期利益が営業利益を上回っているということで、何か一時的な利益が発生していると考え、基本的にはそこを調整する必要があります。
今回の件は、顕微鏡事業の売却益が含まれているため、当期純利益が営業利益を上回ることになりました。オリンパスの当期純利益は3,360億円ですが、顕微鏡事業の売却益である「非継続的からの当期利益」2,210億円を差し引くと、1,150億円となり、これが実質的な当期純利益となります。
PERは【時価総額÷当期純利益】という式でも求められるので、時価総額2兆7,907億円÷当期純利益1,150億円で、約24.2倍という数字が今のオリンパスの実質的なPERとなります。
24倍となると、安いというわけではなくなり、株価のピーク時には実質PERは30~40倍あったものが24倍程度まで下がったということで、調整の範囲とも言えるわけです。
大きく上がりすぎていたから少し下がったというのが、今回の下落の理由の1つではないかと考えられます。
<要因その2:目の前の不安要素>
目先の環境が芳しくないということもあります。
今期の業績予想が減益の予想となっています。その理由として、顕微鏡事業を売却し、その分の利益が無くなってしまうことに加え、コストがかさんでいることもあります。
前期も調子が良かったわけではなく、円安の恩恵で利益が大きくなっていただけに過ぎず、円安の影響が無かったとしたら減益になっていたということです。
目先で万事うまくいっているわけではなく、勢いが無くなってきているところがあります。
それを投資家が機敏に察知して、オリンパスを買わなくなっていることが考えられます。
<要因その3:バリューアクトの動き>
3つ目の理由として、バリューアクトの動きがあります。
バリューアクトは『選択と集中』が主な戦略ですが、このやり方で一時的には収益が上がるのですが、改革が終わってしまうと急な増益が見込めるような局面ではなくなってしまいます。
今回は売上高は減っている中で営業利益率だけが上がっている状況で、これはコスト削減によって利益を増やしてきたということです。ただ、コスト削減には限界があり、当面はこれ以上のコスト削減によって利益を増やすことは難しくなってきます。
できることは終わったのでバリューアクトはそろそろ売りを考えているのではないかと多くの投資家が思っているのではないでしょうか。
もしかしたらバリューアクト自身も今売っていて、その売りが下落を呼んでいる可能性もあります。
これは想像の域ですが、コスト削減によってこれまで無理な動きをしてきた可能性も考えられます。改革の時に買って、改革が終わったら売り抜けるというのがバリューアクトの常套手段となっているので、もう売っていてもおかしくありません。
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