<アメリカでの成長>
もう一つ興味深い動きがありまして、私がヤクルトに注目したきっかけなのですが、アメリカに工場を建設するという話です。
ヤクルトの世界進出は新興国が中心で、アメリカはそこまで大きな市場ではありませんでした。
ところが今、アメリカでも伸びていこうとしています。
その理由の一つとして、アメリカにメキシコ系の移民が多いことが考えられます。
メキシコには既にヤクルトが入り込んでいて、子供の頃に飲んだヤクルトをアメリカでも飲みたいということでニーズがあったのではないかと思います。
実際にヤクルトの資料等にはヒスパニック系・メキシコ系の方々に売れているとあります。
最近ではウォルマートの店頭でも売られるようになったということです。
さらにヤクルトにとって幸運なことが、野球の大谷翔平選手の活躍です。
日本にもヤクルトスワローズというプロ野球球団を持っていますが、大谷選手の所属するエンゼルスのスポンサーにもなっています。
大谷選手がエンゼルスに入団する前である2009年からスポンサーになっていて、エンゼルスタジアムに広告を出していましたが、大谷選手の活躍によってメディア露出が増えているのは間違いなく、アメリカでのヤクルトの売上が2割増となっているようです。
知名度が高まるのは当然のこと、メキシコ系の移民の人たちにとっては懐かしくてついつい買いたくなる人も増えるのではないかと思います。
まだアメリカでは普及率が高いとは言えませんが、これが高まってくると、市場が大きいので成長余地もかなり大きくなるという想像ができます。
また、これまでヤクルトレディを通じて売っていたインドネシアなどの新興国において、コロナ禍ではヤクルトレディをうまく送り出すことができず苦しい状況でしたが、コロナ禍が落ち着いてきたことで息を吹き返すことも考えられます。
<値上げ>
このように、ヤクルト1000の大ヒットや大谷選手の活躍もあり、業績を伸ばしてきましたが、9月にヤクルトを値上げするというニュースも出ました。
値上げによって一時的に買わなくなる人も出てくるとは思いますが、基本的に値上げは利益率の向上を通じて業績に寄与します。
ヤクルト1000のヒットによって広告効果が高まり、ヤクルトのブランド価値も上がってきていると思われるこのタイミングでの値上げはある意味で絶好のタイミングだったのではないかと考えられます。
ヤクルト1000もまだまだ売るということで、また業績を伸ばすことができるのではないでしょうか。
値上げ率は20%と、もちろん原価の高騰で苦しんでいたところからの脱却ということもありますが、利益に対する貢献度も相当大きくなると思われます。