交換用タイヤで儲ける
では、よりブリヂストンを理解するために、タイヤを販売するとはどういうことなのか?タイヤ市場の特徴を考えていきましょう。
タイヤは外から見ると黒いゴムがボコボコしているだけの単純な構造に見えるかもしれません。しかしその設計は高度なものになっています。一番外側のトレッドゴム(黒い部分)に始まり、カーカス、インナーライナー、ビードワイヤーなど様々な部品を組み合わせてできています。

だからこそ、「今からゴムの技術を研究し、後続でタイヤビジネスを始めよう!」という企業は多くありません。つまり、基本的にタイヤ業界は参入障壁が高く、新規参入企業は多くないと言えます。
タイヤは可動式の機械全般で使用されますが、主要な用途は自動車です。その他にもバス・トラックや建設機械、飛行機などの各種産業用もあります。
そして大きな特徴は、交換を前提とした消耗品であることです。従って、国内におけるタイヤの流通で最大の割合を占めるのは市販用(交換用:自動車ディーラーに販売するもの)となっています。

出典:日本のタイヤ産業より作成
そして、タイヤメーカー各社はこの交換用タイヤの利益率を高めに設定することで利益を上げています。
ブリヂストン傘下にはタイヤ館、アメリカにおいてはファイアストーン コンプリート オート ケアというディーラー網を確保しています。
では、あなたがタイヤを交換したい時にどのような基準でタイヤを決めますか?
あなたがタイヤの知識が豊富ではなければ、従来と同じメーカーを選ぶのではないでしょうか?従って、新車にいかに自社のタイヤを選んでもらうか?というブランド力も重要となります。
国内は圧倒も、海外は競合多数
では、ブリヂストンの競合となる企業はどこでしょうか?
国内においては住友ゴム工業、横浜ゴム、TOYO TIREなどが存在していますが、売上は各社ブリヂストンの4分の1以下です。国内はこれら4社の寡占状態であり、ブリヂストンが他社を圧倒しているといって良いでしょう。

出典:各社有価証券報告書より作成
では海外の競合はどこでしょうか?
世界トップはフランスのミシュランです。世界のシェアは約15%、世界初のラジアルタイヤ(現在主流のタイヤ)を開発したことでも有名です。ミシュランガイドも行っている会社ですね。
そして、世界シェア2位がブリヂストンでシェア12.5%です。
3位はアメリカのグッドイヤー社です。シェアは8.4%であり、商用トラックタイヤに強みを持っています。
その下にコンチネンタルや日本の住友ゴムが続きます。

出典:ブリジストンデータ 2023
ミシュラン・ブリヂストン・グッドイヤーの3社は2000年時点で世界シェア50%近くを占めていましたが、現在は約3割強と、シェアが低下傾向にあります。
その代わりに伸びてきているのが、韓国・中国・台湾の新興メーカーであり、汎用品の自動車向けタイヤで徐々にシェア拡大しています。新興3社合わせてのシェアは1割前後ですが、主にアジア向けにタイヤを販売しています。
これらからわかることは、
「タイヤ業界の参入障壁は高いが、トップ企業だとしてもシェアは10%前後と高くない。
従って比較的競争がある業界である」
ということです。