ブリヂストンの目指す姿
では、ブリヂストンは今後どのように成長していくのでしょうか?
特に重要になりそうなのが、プレミアムタイヤ事業です。

出典:決算説明資料
プレミアムタイヤとは鉱山・建設車両や飛行機用のタイヤです。これらのタイヤは利益率が高いという特徴があります。
出典:決算説明資料より作成
このプレミアムタイヤの中でも、わかりやすい航空機用を中心に将来を考えます。
まず、航空機用のタイヤは求められる性質が多岐に渡ります。
スピードや重量に耐えられる内圧、摩擦で250度前後まで温度が上がる一方で、雲の上に行けばマイナス45度まで気温が下がることから、耐熱性能があること。
タイヤが重いと飛行性能に差が出ますから、軽量化という課題もあります。
このように高度な技術が必要とされるため、航空用タイヤ製造メーカーは必ずしも多くありません。その中でブリヂストンはシェアトップとなっています。

実は、この航空機タイヤは構造が複雑であることに加え、厳しい認可制度が取られていることから、中々技術革新が起きません。
2015年くらいから、従来のタイヤに代わり、耐摩耗性が向上し軽量化が進んだラジアルタイヤを使おうという動きが出てきます。しかし、2023年現在も従来のタイヤが主力です。
製造業においては利益拡大のために、既存の商品を高付加価値化を促す戦略が採用されることが多いですが、航空タイヤ自体の高付加価値化はあまり進んでいない印象を受けます。
そこでブリヂストンは顧客サービスに舵を切っています。
例えば、JALに対する高付加価値化です。
先にも述べましたが、航空機用タイヤは、機体の速度と重量を支えながら離着陸を繰り返すという過酷な条件下で使用されます。通常、航空機が数百回離着陸する毎に新しいタイヤに交換する必要があること、使用環境によって摩耗進展速度が異なるため、突発的なタイヤ交換や、交換時期の集中が発生していました。
そこで、JALの持つ航空機に関する知見・フライトデータとブリヂストンの持つタイヤに関する知見・デジタルを活用した摩耗予測技術をかけ合わせることで、タイヤの交換時期を予測することが出来るようになり、精度の高い計画的なタイヤ交換ができるようにしたのです。

商品自体に技術革新が起きづらいのであれば、それ以外のプラスαの要素で利益を上げる戦略です。この戦略は、他の企業にも横展開できること、また、ブリヂストンが航空タイヤ領域で高シェアであることを踏まえると、今後の成長を加速させる可能性を秘めています。
しかし、懸念点もあります。
それは、この航空機タイヤ市場の市場規模の小ささです。
2020年現在の航空機用タイヤの市場は、自動車用タイヤ市場の10分の1程度の規模です。
とはいえ、2030年ごろまでの航空機タイヤ市場の年平均成長率予測は6.5%です。自動車は3%ですから、成長の見込みは相対的に高いです。プレミアムタイヤ事業には建設機械向けのタイヤも含まれています。今後に対する一定の期待は持てそうです。
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