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トランプが再び米大統領になると何が起こるのか。ディープステート解体とホワイトハウス独裁制が生み出す混沌世界=高島康司

「ディープステート」の解体

このように「プロジェクト2025」では、三権分立を制限して、すべての権力をホワイトハウスに集中する大統領独裁制と呼べるような体制の構築を目指している。そして、この大統領独裁制には明白な目標がある。それは、「ディープステート」の解体である。ちなみにこのプロジェクトの言う「ディープステート」とは、「CIA」や「FBI」、そして「NSA」のような情報機関だけに限定されるものではない。司法省を始めとした連邦政府の各省庁の官僚制全体が「ディープステート」とされ、解体の対象になっている。

この計画では、「司法省」の資金削減、「FBI」と「国土安全保障省」の解体、「教育省」と「商務省」の廃止が提案されている。「ワシントンポスト紙」は匿名の情報源を引用して、「プロジェクト2025」には、国内法執行のために1807年の暴動法を即座に発動して、米国内で軍隊を配備することや、トランプの敵対者を追求するよう司法省に指示することが含まれていると報じた。

プロジェクトのディレクターである元トランプ政権高官のポール・ダンズは、2023年9月に、「プロジェクト2025」は「大統領に進軍し、ディープステートとの戦いに備え、整列し、訓練され、本質的に武装化された保守派の新しい軍隊をもたらすために組織的に準備している」と述べている。これはまさに、トランプの保守派による革命プランである。

こうした革命プランは、「Mandate for Leadership: The Conservative Promise(リーダーシップの使命:保守派の約束)」と題された920ページの政策提言本にまとめられている。これは無料でダウンロードし、誰でも読むことができる。これには、革命政権の高官候補者となる人材リストが付随している。また、「大統領行政アカデミー」と呼ばれるオンラインコースや、政権移行計画策定の手引きもある。以下で読むことができる。

Mandate for Leadership
The Conservative Promise
https://thf_media.s3.amazonaws.com/project2025/2025_MandateForLeadership_FULL.pdf

地球温暖化の否定

この計画案はとにかく過激である。実際にトランプが大統領に就任し、このプランが実行されると、法の支配に基づく民主主義国家としてのアメリカが、本質的に転換してしまう可能性は高い。いま日本の主要メディアでは、トランプが次期大統領になった場合、国際強調を否定した自国最優先の一国主義になることが懸念されている。

しかしこの計画を見ると、変化はそれどころではない。アメリカという国家の根幹を揺るがす大統領独裁制の成立になる。もちろんトランプは、こうして得られた権限を使って、バイデンやクリントン、そして民主党を排除し、自分を迫害したものの法的責任をとことん問う闘争を開始するはずだ。このように見ると、先に紹介した「ユーラシア・グループ」の「トップリスク・レポート2024」で予測されたトランプの復讐は現実になる可能性が高い。

この計画書には、ホワイトハウスに権力を集中させた後、連邦政府の省庁をどのように改革すべきか、その具体的なプランが掲載されている。だが、この計画書には本来あってしかるべき項目がない。それは、地球温暖化の対策である。

「プロジェクト2025」は、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出を削減するための戦略を提示していないのだ。この計画書には、クリーン技術に3700億ドルを提供する画期的な法律である「インフレ削減法」の廃止、「米エネルギー省」の「融資プログラム局」の閉鎖、「米国家安全保障会議」の議題から気候変動を排除すること、同盟国に化石燃料の使用を奨励することなどが含まれている。

またこの計画書は、北極圏の掘削を支持し、連邦政府には「莫大な石油・ガス・石炭資源を開発する義務」があると宣言している。「プロジェクト2025」は、二酸化炭素の排出が人間の健康に有害であると判断した2009年の「環境保護庁」の所見を覆し、連邦政府が温室効果ガスの排出を規制することに反対する。

Next: 2020年以上に混乱する米大統領選挙。日本も傍観はできない…

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