ポイント3:コロナ禍の影響は?
一方で、コロナ禍では両社ともに大きなダメージを受けました。
具体的には借入金の増加と公募増資による株式価値の低下です。
出典:株探より作成
両社ともにコロナ禍で運営資金の確保が必要でした。2020年から2021年にかけてANAは1兆円、JALは5000億円近くの借入を行っています。今後はこの返済を行う必要があるため、利益を創出したとしても、返済などに充当され、成長投資がやりにくい状況かもしれません。そもそも支払利息の増加によって、利益が圧迫される懸念もあります。
そして、株価に悪影響を与えているのは公募増資です。
特にANAは現在はコロナ前と同水準のPERでありながら、利益も稼げているのにも関わらず、株価はコロナ前の2019年よりも低いままです。
これは公募増資によって発行株数が増えることで1株あたり利益(EPS)が下落したためです。すなわち、1株あたりの価値が減少し、同じPERで考えると株価は低くなってしまいます。
つまり、「2019年に比べて株価が安いから、ここから上昇余地がある」と考えるのは危険です。コロナ前の4,000円前後を超えるようになるためには、まだまだここからの利益成長が必要です。
ポイント4:配当・優待はどうなる?
では配当金などの株主還元はどうでしょうか?
両社の株主還元を確認してみましょう。
出典:マネックス証券、各社ホームページより作成
まず配当金について注意したいのは、業績が悪ければ減配する企業であるという点です。逆に今後の業績が伸びていけば、増配する期待もあるでしょう。
しかし、ここでもポイントになるのは公募増資の影響です。企業の視点で考えると、株式数が増加しているため、コロナ前と同水準の配当金を出すことに抵抗があるはずです。
それを上回る利益成長があれば良いのですが、借入金の返済などに資金が流れる可能性もあります。そもそも配当利回りが高い企業ではありませんから、配当に期待して投資をするというのは、あまり良い方針ではないと考えます。
(旅行が好きで優待が欲しい、というのであれば、それはそれで良いと思います)
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