アウトドア製品の製造販売会社「スノーピーク」の2023年12月期の連結決算が13日に発表され、純利益が前期比99.9%減の100万円だったことに衝撃が走っている。
報道によれば、売上高は16%減の257億円、また営業利益のほうは、ベースアップした人件費などの経費が膨れ上がり、74%減の9億4300万円に。国内既存店と米国現地法人の固定資産の減損処理で4億2800万円の特別損失を計上したことも響いたようだ。
ちなみに24年12月期は、積極出店を続ける中国と米国での売り上げ増加分を踏まえ、純利益が11億円、売上高は306億円を見込むという。
高品質・高価格帯のキャンプ用品で支持を集めるも…
もともとは新潟県三条市の金物問屋が前身であるスノーピーク。アウトドア製品事業に注力し始めたのは1980年代後半ごろで、当時の国内アウトドア市場では珍しかったというハイエンドなキャンプ用品を世に出し、これが本格志向のキャンパーらからの支持を集めることに。
そんな“スノーピーカー”とも呼ばれる、同社製品の熱狂的なファンに支えられる形で、その後も同社は業績を伸ばした同社は、近年では空前のキャンプブームの後押しもあり、2022年12月期には過去最高の307億7,300万円の売上高を達成するとともに、17期連続での増収も記録していた。
世間からは、いわゆるブランディングの上手さやファンマーケティングの巧みさという点でも評価されることも多かったスノーピークなのだが、そんな“我が世の春”といった状況から、わずか1年ばかりで今回のような“失速”ぶりが取沙汰される事態に。
確かに、2010年代半ばあたりから盛り上がりをみせ、コロナ禍においても続いていたキャンプ人気も、このところはすっかりと落ち着いてしまい、つい最近もブックオフのとある店舗において、新品同様のキャンプ用品が投げ売りされていることが話題になったりと、ブームの終焉を感じさせる動きが多々みられる状況ではある。
ただスノーピークに関しては、特に昨今のブームに乗ってキャンプを始めたといった向きからは「流石に値段が高すぎる」との評価がかなり多かったよう。
キャンプ用品といえば屋外で使うものである以上は、汚れたり傷ついたりする可能性も高く、さらに昨今のブームによってモラルの欠く人間も多く流入しているキャンプ場においては、盗難のリスクもかなり高いわけで、そうなるとハイエンドなスノーピークに食指が動かないというのは、当然の流れといったところ。
さらに最近ではワークマンやロゴスなどといった、ソコソコの実用性を持ちつつコスパが良いアイテムを揃えるメーカーも増えただけに、初心者の多くはそちらに流れていき、スノーピークに関しては、何でも“形から入る”タイプの人々、あとはいわゆる“意識高い系”からの支持ぐらいしか得てなかったのでは……との見方も多いようである。
尾を引く3代目社長の“不倫辞任”
いっぽうで、今回取沙汰されているスノーピークの“失速”に関して、その遠因として浮上する格好となっているのが、創業者の孫である3代目女性“元”社長の存在だ。
2020年3月に32歳で社長に就いた際には、当時の東証一部上場企業の社長としてはあまり例のない若さで、しかも女性経営者ということで大いに注目を集めた3代目だったのだが、社長就任からわずか2年半のタイミングだった22年9月に、突如本人から「既婚男性との交際および妊娠を理由として、当社およびグループ会社の取締役の職務を辞任したい」との申し出があり、そのまま辞任することに。
この3代目だが、社長就任以前から同社が手掛けるアパレル事業に大いに関わっていたようなのだが、これらが高価な割にはあまりぱっとしないといった評価が多かったうえに、古くからのスノーピーカーにとっては、アパレルのウエイトが同社の商いのなかで大きくなっていくことを、あまり好ましくは見ていなかったよう。
そんななかで起こったのが“不倫辞任”だったのだが、これによってキャンプ用品メーカーにとっては大きなターゲットであるファミリー層からは特に敬遠されてしまうこととなり、経営的には大きな痛手となったのでは……というのだ。
このように今回取沙汰されているスノーピーク“失速”なのだが、いわゆるキャンプブームの終焉といった外部要因もさることながら、評判のよろしくないアパレル事業への執着と、3代目社長の“不倫辞職”によるイメージダウンが業績悪化に繋がったという、いわば“自爆”ではないかというのが、多くのキャンパーらの間で大勢を占める見立てのようである。
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