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スクエニ株価暴落と特損221億円で取り沙汰されるドラクエ開発中止。業績を悪化させた4つの誤算とは?=佐々木悠

鳥山氏の逝去…ドラクエの開発は進んでいる?

では、この開発を取りやめたゲームとは何でしょうか?スクエニはそれを公開していません。

 

しかし、X上では目玉タイトルであるドラクエ12の開発が中止or滞っているのではないか?という噂が飛び交っています。

特に、上記の方が指摘するように、ドラクエ開発に関わったメンバーに悪いニュースが相次いでいます。

三宅有氏(ドラクエ開発責任者)が突然異動、鳥山明氏(ドラクエのキャラクターデザインを担当)の逝去などがその代表でしょう。こういった事実が「ドラクエの開発が進んでいない」という噂の源泉だと考えます。

 

一方で、鳥山氏の逝去に関連し、スクエニは「ドラクエ12は発売を目指して開発を進めている」と説明しています。そして、開発を中止したコンテンツは27年3月期以降に販売される予定だったものであり、開発中止の可能性のある対象は複数あったように読み取れます。

 

したがって、本当にドラクエ開発が中止されたかは微妙です。

2024年5月27日は「ドラクエの日」だそうです。ここで何か発表があるかもしれません。

 

そして、投資家であれば、計上済みの損失も大切ですが「今後どうなるのか」を考えるべきです。

決算同日に発表された中期経営計画を見てみましょう。

今後3年で改善できるか?業績が悪化した4つの要因

スクエニの現状をざっくりまとめると、

「コロナ禍で巣ごもり需要によってゲームなどが好調だったが、失速している」

です。この原因は主に4つの要因があるようです。

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出典:中期経営計画

  1. ゲームの開発本数が多く、利益率が悪い
  2. 同じ時期にゲームを出すことから自社タイトルの競合を自ら作り出している
  3. スマホゲーム市場の成長鈍化
  4. 経営管理基盤の未整備

 

特に①と②が現れているのが2023年1月〜2月に販売されたタイトルです。

  • FORSPOKEN:魔法に特化したオープンワールドアクションRPG
  • シアトリズム ファイナルバーライン:歴代「ファイナルファンタジー」シリーズの楽曲をつめこんだリズムアクションゲーム
  • オクトパストラベラー II:ドット絵と3DCGを融合した「HD-2D」のグラフィックを魅力としたRPGの続編

 

このように「数撃ちゃ当たる」的な精神がないとは言い切れません。

また、ゲーム一本のボリュームも多く、直近の作品である「FFVII リバース」は、クリアまでに100時間以上かかるなど、単純な発売タイトル数以外の「量」も多いようです。

 

この現状から。ゲームに関する開発コストは積み重なる一方であり、先に述べた「研究開発費の増加」につながっています。加えてカニバリ(共食い)が起きている、ゲームの利益率が悪い(想定よりも売れていない)という状態なのです。

 

この現状に対応するために、3年かけて経営体制を見直すと述べています。

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出典:中期経営計画

 

要するに重要なことは「内部体制の一新」ではないでしょうか。

  • ゲームの質を高めるべく社内の開発体制の整備
  • 点在している事業機能の集約によって、効率を促進する
  • IP多面展開を推進する組織体制の構築
  • 欧米両拠点の機能及び組織構造の見直しとコスト最適化

 

こういった組織内部のテコ入れによって、事業体質の改善を図るものと読み取れます。

 

これが必要な理由は、企業の成り立ちにあります。スクエニは2003年に株式会社エニックスとスクウェアが合併したことで誕生した会社です。

 

この合併は20年ほど前の話ですが、いまだに社内体制は整っていないのです。

転職サイトのオープンワークの口コミを参考にすると

「部署が違えば文化や雰囲気に加え、評価制度にも違いがある」

「開発部署ごとの縦割り体制。セクションごとの責任の押し付け合いも」

 

こういった現状にメスを入れるべく23年6月に社長に就任した桐生隆司氏が、組織の抜本的見直しを行おうとしているのです。

 

桐生氏の経営に対する考えは社長就任時のインタビューに記載されています。

 

代表取締役社長として、これから変えていきたいこと、のばしていきたいことを教えてください。

「変わったな」と皆さんに思っていただけること。これが私がやりたいと思っていることに近いです。グループの中でのさまざまな資産を活用したおもしろさを、お客様によりお届けできる体制づくりに挑戦したいです。これから先の時代を見据えて獲得しなければならないものもあるでしょうし、逆にもう少し磨き上げなければならないといったものに関しては場合によってはちょっと足を休め、自分たちの姿を見直すことも必要になるかもしれません。

スクエニの1つの強みとしてコンテンツの開発力は評価できます。それを活かすためにも、様々な変化を起こしていくようです。

これが、スクエニの中期経営計画のテーマである「量から質への転換」です。

 

組織改善の進捗というのは、投資家などの第三者からは判断しづらく、その成果はPLやBSに出てくると言えるでしょう。ここを信じれるかどうかが、投資判断の大きな分かれ道になりそうです。

Next: スクエニほか「ゲーム株」の特徴とは?長期投資家が見るべきポイント

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