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実は庶民向け?成城石井の「思わず買っちゃう」すごいブランド力とビジネスモデル=山口伸

特徴的な立地と商品構成

価格帯の違いもあるが、他のスーパーと比較して成城石井が特徴的なのは「立地」と「商品構成」だ。

現在、およそ7割の店舗が首都圏に位置する。首都圏・中京・関西など幅広い地域に出店しているが、そのほとんどが駅ビルや駅近辺の立地に店を構える。北関東や地方でも新幹線が止まるようなターミナル駅に出店する。

出店戦略について公式サイト「高所得者層の居住比率も出店基準の目安」と記載しており、“高所得層の利用客が多い駅”が目安のようだ。一方で亀戸や北千住など庶民的な街にも出店していることから、乗降客数も目安なのだろう。

商品構成については、商品1SKUあたり1~2列のみを陳列し、数よりは種類を充実させる戦略をとっている。商品棚も他のスーパーより高い位置まで伸びているため、狭いエキナカの店舗とはいえ商品数は多い。買い物には目的買いだけでなく、衝動買いを楽しむ目的もある。商品数の多さはレジャー要素をもたらし、消費者がつい寄ってみたくなる店舗づくりに貢献しているといえる。

また、通常のスーパーでは野菜・肉・魚の生鮮3品を取りそろえるのが定番だが、成城石井では約半数の店舗が3品を揃えていない。日持ち品や総菜、酒類に力を入れている方針だ。ちなみにワインなどの輸入品は子会社の「東京ヨーロッパ貿易」を通じて仕入れ、中間マージンを省いている。

客を惹きつける総菜とスイーツ

単に高いものを扱うだけではここまで伸びなかっただろう。年収2,000万円云々の噂とは裏腹に幅広い客層が入店し、夕方は普通のスーパーのように賑わう。

そして客を惹きつけているのが成城石井が自社で製造するスイーツと総菜だ。これらの商品は入口付近に置いているため、集客手段にもなっている。1本1,000円しない「プレミアムチーズケーキ」は看板商品の1つであり、税込300〜400円台のカップスイーツも評価が高い。概ね500~700円台のサラダや総菜も人気を集めている。「スペイン風肉団子」「5種海鮮の旨味ブイヤベース風スープリゾット」のように、普通のスーパーに無い凝った商品が多い。

口コミを見ると確かに味も評価されているが、人気の背景には成城石井が持つ「高級スーパー」としてのブランド力も関係しているのではないだろうか。成城石井の商品というだけで高品質を印象付ける。

一方で値段自体はそこまで高くない。先述のプレミアムチーズ、デパ地下などの専門店では1本2,000円に上ることもある。ケーキ類も専門店と同等程度。総菜も普通のスーパーよりは高いが『RF1』などの専門店と同じかそれ以下のレベルだ。そして、価格表示は税別で399円、599円のように、かつてのサイゼが採用していた「端数価格表示」が多い。端数価格は消費者を錯覚させ、安い印象を与える。

つまり成城石井は商品に高級スーパーとしてのブランド力を付与しつつ、実際にはリーズナブルな値段で提供することにより、集客に成功している。入口付近の総菜やスイーツで釣り、他の商品も買わせる構図だ。現状、総菜などの自社製造商品の売上比率は2割だが、今後は30%まで伸ばしたいとしている。先述の第3工場の新設もそうした背景がある。

Next: 上場計画は断念。今後の成長戦略は?

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