中東情勢との連動
日本の主要メディアでは、今回の株価の暴落をこのように説明している。もちろん、この説明は完全に正しいものの、実はメディアではほとんど触れられていない要因が実は存在している。
それは、中東情勢との連動である。
周知のように、7月31日、ガザで戦闘を続けている「ハマス」の最高幹部、ハニーヤが、イランの新大統領の就任式に出席するために訪問していたイランで殺害された。ハニーヤ最高幹部はテヘラン北部にある建物に宿泊していたところ、現地時間の31日の午前2時ごろ、空中から発射された物体によって暗殺された。これはイスラエルの犯行であることはほぼ間違いないものの、イスラエルは否定も肯定もしていない。
ハニーヤ最高幹部の殺害の影響はあまりに大きかった。イランの最高指導者ハメネイ師は声明を出し「テロリストであるイスラエルはわれわれの客人を殉教させた」として、イスラエルを非難した上で、「われわれはイランの領土で起きたこのつらい事件で、復しゅうすることをみずからの義務だと考える」として、何らかの報復を行うことを誓った。むろん、報復の対象はイスラエルである。
さらに、前日の7月30日には、イスラエル軍は隣国レバノンの首都ベイルートで「ヒズボラ」の司令官を標的に空爆を行い、殺害しと発表した。「ヒズボラ」はこの殺害の報復として、イスラエル北部に対するミサイルの集中攻撃を激化させている。
中東大戦争に発展する危険性
このように、「ハマス」のハニーヤ最高幹部の殺害や「ヒズボラ」の司令官の殺害で、イランが本気でイスラエルに報復攻撃すると、中東全体に戦争が拡大する可能性が極めて高くなる。それというのも、今回のハニーヤ最高幹部や「ヒズボラ」の司令官の殺害は、緊張がもっとも高まっているタイミングで実行されたからだ。
この殺害が実行される前日の30日に、黒海に面した北東部の都市リゼで開かれたトルコの与党、「公正発展党(AKP)」の会合に出席していたトルコのエルドアン大統領は、「トルコはイスラエルがパレスチナにこのような馬鹿げたことをできないように、非常に強くなければならない」と語った。そして、「われわれがカラバフに入ったように、リビアに入ったように、われわれは彼らにまったく同じようなことをする」と言い、パレスチナを支援するため、ガザ戦争に軍事介入する可能性を示唆した。
これは、エルドアンが支持者の声に応えるためのリップサービスという側面もあるが、かつてトルコはリビア紛争やアゼルバイジャンとアルメニアの「ナゴルノ・カラバフ紛争」にも軍事介入してきたので、現実性がないわけではない。トルコはNATO第2の規模の軍隊を保有している。エルドアンは今回のハニーヤ最高幹部の殺害にも激怒しているので、イランがイスラエルへの報復を開始したタイミングで、ガザへの軍事介入を行う可能性も完全には否定できない。
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