8月5日、日経株価を筆頭に「世界同時株安」が発生し、それも大暴落となった。実はこの背景には中東情勢がからんでいた。これを解説して、今後を展望する。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2024年8月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日経平均の大暴落と世界同時株安の背後にあるもの
日経平均の大暴落と世界同時株安の背景、そして今後の展望について解説する。主要メディアでは注目されていない視点から書く。
8月5日、経平均は4,451円も急落し、1987年のブラックマンデーを上回った。だが翌日の6日には過去最大の3,217円上昇して前日の損失を取り戻し、7日には一時1,100を越えて上昇した。だが8日にはこの記事を執筆している時点で600円ほど下げている。これほどの大暴落と急騰を繰り返すことは、歴史的に見ても非常にまれである。
この原因の一部は、日銀の政策転換にったことは間違いない。日銀は7月31日に、これまでのゼロ金利政策を改め、0.25%に政策金利を上昇させた。これが引き金となり、日米の金利差の縮小から円が買い戻され、円高に動いた。これが背景となり、日経平均が下落する方向に動いていた。
しかし、ちょうどそのタイミングで米経済が悪化していることがはっきりした。これが日経平均のパニック的な暴落を招いた。米労働統計局によると、7月の雇用市場は大幅に軟化し、月間雇用者数はわずか11万4,000人、失業率は4.3%に上昇した。この11万4,000人という数字は、予想されていた17万5,000人を大きく下回り、6月の17万9,000人(当初発表の20万6,000人から下方修正)から減少した。失業率4.3%は、6月の4.1%から上昇し、予想の4.1%を上回った。
また、7月の平均時給は0.2%上昇し、予想の0.3%、6月の0.3%を下回った。年間ベースでは、平均時給は予想の3.7%増、6月の3.8%増に対し3.6%増となった。週平均労働時間も予想を下回り、予想34.3時間、6月34.3時間に対し34.2時間となった。
このように、すべての数値が市場の予想を下回った。この結果、ナスダック先物は2.3%下落、S&P500は1.6%下落した。また、ドルも0.6%下落したが、一方金も1.3%上昇して1オンスあたり2,513ドルと史上最高値を更新した。さらに、10年物国債利回りは15ベーシスポイント下落の3.83%、2年物国債利回りは23ベーシスポイント上昇の3.93%となり、いずれも過去1年以上で最低の水準となった。
このように、日銀の利上げによって円高、株安の方向に動いているタイミングで、米経済の悪化が伝えられたため、円高と株安は予想を越えて加速したのである。これが、5日の日経平均暴落の理由のひとつだ。
円キャリートレードの巻き戻し
さらに今回の暴落には、ゼロ金利政策の元で続いていた円キャリートレードの巻戻しの影響もある。
日本の金利が限りなくゼロに近いとき、日米の金利差を利用して、円で安く借りて、その資金をアメリカでドル建ての高利回りの資産で運用することができる。こうした円キャリートレードは、円を売ってドルを買う操作となるため、円安を加速させる。
しかし今回、日銀が金利を引き上げたので、投資家は借りた円により高い金利を支払わなければなくなった。さらに、円の上昇から為替差損にも直面した。
この結果、円建ての債務を支払うために、手持ちのドル建て資産を売って円に変える円買いドル売りが加速したのだ。円キャリートレードの巻戻しである。
これが円高を加速させ、株安を招いたのだ。