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世界同時株安の背後に中東情勢?日本では報道されないブラックスワン到来の危機=高島康司

アメリカでも高まる緊張

このような中東情勢の緊張は、イスラエルを支援しているアメリカにも波及し、イランに対する強硬な姿勢が強まっている。

7月31日、米上院の「外交問題委員会」で「核兵器開発を通じて米国の国家安全保障を脅かすイラン・イスラム共和国に対し、合衆国軍隊の使用を許可する共同決議」が審議されている。これは決議のタイトルにあるように、核兵器を開発しているイランをアメリカの国家安全保障に対する脅威としてとらえ、イランを攻撃する許可を米軍に与えるという決議だ。この決議には次のようにある。

「大統領は、イラン・イスラム共和国が以下の状態にあると判断した場合、イラン・イスラム共和国に対して必要かつ適切なあらゆる武力を行使する権限を有する。

(1)合衆国の国家安全保障上の利益を脅かす核兵器の保有過程にある。

(2)兵器級レベルに濃縮されたウランを保有し、核弾頭を保有し、または米国の国家安全保障上の利益を脅かす核弾頭を搭載可能な運搬手段を保有している」

これはかなり過激な決議だ。共和党の保守強硬派のリンゼー・グラム上院議員が提出したものだが、いまのところ審議されてはいるものの、民主党が過半数の上院では可決される可能性が少ないと見られている。しかし、イスラエルを熱烈に支援している福音派系議員が圧倒的に多い下院では、この決議を支援する議員も多い。

新たな中東戦争がもたらす余波

このように見ると、ハニーヤ最高幹部と「ヒズボラ」の司令官の殺害は、情勢がもっとも緊張しつつあるタイミングで行われたことになる。

ここでもしイランがイスラエルに報復し、そしてイスラエルに甚大な被害でるようなことにでもなれば、アメリカはもちろんだが、トルコの介入も完全には否定できなくなる。イスラエルとアメリカはイランを攻撃し、そのタイミングでトルコがパレスチナ支援のために、ガザ戦争に介入するかもしれない。

もしそのような状況になると、エネルギーの貿易ルートは遮断し、エネルギー価格は高騰する可能性が出てくる。すでにイエメンの親イラン勢力の「フーシー派」は紅海でイスラエルや欧米のコンテナ船やタンカーを攻撃している。海上輸送運賃は、2019年のパンデミック前の平均の4倍になっている。いまでも、紅海の状況によって引き起こされるサプライチェーンの継続的な混乱が、少なくとも2024年末まで続くと予想されている。イランのイスラエル攻撃が引き金となりイラン戦争が起こると、この状況はさらに悪化し、紅海の貿易ルートそのものが遮断されるだ
ろう。

それだけではない。戦争が始まればイランは「ホルムズ海峡」のイスラエル関連の船舶を標的にした攻撃を行う。紅海での攻撃と同様の影響を及ぼす可能性がある。

世界の石油輸送の20%は「ホルムズ海峡」を通過する。この場所がイランの攻撃対象になり、また閉鎖されるようなことにでもなれば、石油とガスの供給が制限され、エネルギー価格は急騰する。その結果、やっと収まりかけている主要国のインフレは一挙に亢進することにもなる。

もちろんインフレの亢進は、アメリカを始め主要国の経済に甚大な影響を及ぼす。

Next: ブラックスワンは近い?予想される今後の展開は…

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