「新紙幣へ両替する」とのウソの説明をして、顧客から預かった計5,535万円を着服した銀行員が、懲戒解雇になったと報じられている。
報道によれば、懲戒解雇となった埼玉県深谷市にある群馬銀行の支店に勤務する20代男性。同行によれば、男は8月13日~9月3日にかけ、埼玉県内の個人や法人、合計16か所の取引先に「新紙幣への両替目標がある。両替を無料で受け付ける」とウソの説明をしたうえで、現金を預かり着服したという。
顧客から銀行に問い合わせがあり、着服の事実が発覚。男は銀行の調査に対し「話題にしやすかった。金はギャンブルに使った」と話しており、自宅や車からは約400万円が見つかったものの、それ以外はオンライン上で公営ギャンブルや野球賭博、またスポーツくじなどに使ったとみられている。
深谷市民の“渋沢栄一愛”を逆手に?
今年7月3日の発行からすでに3か月ほど経っているものの、いまだに慣れないといった声も多く聞こえてくる新紙幣。
そんななか最近では、渋沢栄一の肖像画が描かれた新1万円を、結婚式のご祝儀に用いるのが不適切ではないか……といった話が大いに取沙汰されたことも。
「近代日本経済の父」と呼ばれ、大河ドラマのモデルにもなった偉人である渋沢栄一だが、その反面で妻と愛人をひとつ屋根の下に住まわせるなど、女性関係にだらしない面があったことから、そういった話が出てきたようなのだが、SNS上からは「謎マナー」だといった否定的な反応が噴出する格好となった。
このように否定的な反応も多いといった渋沢栄一の新紙幣なのだが、その反面で今回の事件の舞台となった埼玉県深谷市といえば、渋沢栄一が生誕した地で、地元民からは“栄一翁”と呼ばれ、今でも生家などといった所縁の建物が多く残されているなど、その人気ぶりは絶大。
今回、着服が露見した男は「新紙幣への両替目標がある」といった、ある意味で同情を買うような言い分で、顧客から5,000万円以上の大金を集めることに成功したわけだが、その背景には渋沢栄一人気が異様に高い土地柄という特殊な事情もあったようだ。
とはいえ、8月半ばから約半月ちょっとという短期間で、5,000万円以上の大金が男の手に集まる格好となったというのは、いくら渋沢栄一のことが大好きな深谷市民とはいえ、少々迂闊すぎだったのではという感も。
またこの元行員にしても、ここまで派手に横領行為を繰り返していれば、露見するのは時間の問題だろうにも関わらず、それでも集金に勤しんでいたということで、その犯行ぶりは大胆というよりも“なりふり構わず”といった印象も受けるところである。
横領した金を“MEGA BIG祭り”にも投入?
今回の横領男だが、その金を公営競技のネット投票やスポーツくじ、さらには野球賭博などにも使っていたということ。公営競技などの合法なものだけでなく、恐らくは非合法であろう野球賭博にまで手を伸ばしていたということで、かなりのギャンブル好きだったことが想像される。
ゆえに男は最初から、それらの種銭を確保するため横領に精を出していたと思われるのだが、奇しくもその同じタイミングで起こったのが、8月末あたりに大いに話題となった、いわゆる“MEGA BIG祭り”である。
サッカーくじの一種であるMEGA BIGは、その週に行われるサッカー12試合の結果を1口300円でランダムに予測するもの。1等確率は16,777,216分の1と相当低いものの、1等賞金は最高で12億円と超高額に設定されているのが特徴だ。
そんなMEGA BIGなのだが、8月24日発売分のものにおいては、台風10号が列島を直撃した影響で、対象試合のうち4試合が中止となり、残り8試合の結果のみで当せんが決まることに。そのため1等の当選確率が65,536分の1と、通常時よりも256倍も当たりやすい状況となった。
さらにその時点で、前回までのキャリーオーバーが58億円を超えていたこともあり、これは滅多にない高額当せんの大チャンスということで、購入者が爆発的に増え、なかには数千万円分のくじを購入したという強者も現れるなど、結果的に過去最高の47億1,000万円という売上を記録する展開となったのだ。
今回の横領男も、大のギャンブル好きであれば、この祭りの状況を事前に把握していたハズ。さらにこのMEGA BIGの場合、ある程度の金額を買わないとリターンが見込めないということで、横領した金の多くをつぎ込んだということも、大いに考えられる状況なのだ。
そんな前代未聞ともいえる“MEGA BIG祭り”だったのだが、9月2日に発表された当せん結果によれば、1等の当せん金額は2,480万430円で、それが269口も飛び出すという異例の結果に。
報道によれば、男による横領は9月3日まで行われていたということで、たまたまそのタイミングで銀行側にバレてしまったことも考えられるものの、前日のMEGA BIGの結果も、男の心境に何らかの影響を与えた可能性も。実際、銀行側が男の手元から回収できたのは、5,535万円という横領額に対して、わずか400万円ばかりだったということで、まさに「夢破れた後」といった状況だったようだ。
Next: 「そして名前はなぜか公表せず」









