米国大統領選挙が目前に迫るなか、金融市場は再び混乱の兆しを見せています。過去にトランプ氏が絡んだ選挙では、市場が大幅に乱高下し、投資家は予想外の動きに戸惑いました。今回はどちらの候補が勝っても、大きな市場の変動が予想され、すでに金融機関は対応の準備を進めています。投資家は、この先行き不透明な大統領選にどのように備えるべきなのでしょうか。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年10月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
市場関係者が警戒する「米大統領選」
米国の大統領選挙が迫っています。過去2回のトランプ氏が出馬した選挙では選挙後に市場が大きく混乱しています。
2016年に予想に反してトランプ氏が勝利した際には、当初株価が大きく下落したのち、今度は株価が急反発しました。2020年にトランプ氏が破れた際には、トランプ氏がこれを認めず、年明けには支持派が国会乱入の事件まで起こしました。
今回はどちらが勝ってもこれまで以上に大きな混乱が予想され、米国ではすでに金融機関が市場対応のための人員増強などを進めているといいます。
今回の選挙にどう備えたらよいのでしょうか。
事前にはトランプ勝利を見込んだトレードも
米国大統領選まであと1週間となりました。しばらくはハリス副大統領が優勢と言われましたが、最終盤になってトランプ候補が巻き返しました。
これにはイスラエルの戦争拡大が影響しているとみられます。非人道的殺戮を続けるイスラエルを支援するバイデン政権への批判が強まり、トランプ氏に決着をつけてほしい願望が見られます。
特に激戦州で軒並みトランプ優勢となり、市場はすでにトランプ勝利を織り込んだ「トランプ・トレード」を展開しています。
長期金利は財政赤字を懸念して上昇し、10年国債利回りは4.2%を大きく超えてきました。金利高は通常株式市場を圧迫し、特に金利に敏感なナスダックを圧迫するのですが、株式市場は「トランプ大統領」を先取りして上昇、ナスダックも過去最高値を更新しました。
株式市場は近年にない強気相場の形になっています。
トランプ勝利の為替リスク
トランプ大統領となった場合のイメージとして、一般には減税などによる財政赤字の拡大や対中国を中心に輸入品に高い関税をかけ、国内産業を守ろうとするなかで、米国内がインフレになりやすく、貿易が縮小するリスクが意識されています。
しかし、インフレ圧力が高まるという点では、ハリス大統領となった場合でも「大きな政府」による財政赤字の拡大、インフレ圧力という点ではあまり変わりません。
むしろ、一般にはあまり意識されていない「為替リスク」に注目したいと思います。結論から先取りすれば、トランプ大統領でドル不安が高まるリスクがあります。