トランプ氏はもともと「ドル高は米国産業にとっては大惨事」といい、FRBに金利を下げさせ、ドル安誘導したい意向を見せています。これは意図したドル安誘導ですが、トランプ再選の場合、当局のコントロールを超えたドル不安を伴ったドル安となるリスクがあります。
トランプ氏は、中国の習近平国家主席と共通する「権力の集中、独占」を考えています。すべての権力を大統領府に集中したいと考えています。第1期においても、最高裁判事をトランプ氏寄りの保守系判事を据え、その後のトランプ氏を提訴する事件においてその成果を発揮しています。
今度トランプが再選すれば、さらに強力に「権力の集中」策に出るとみられます。
その一端がFRBの直接管理です。金融政策は本来政治から独立した形が望ましいというのが世界標準ですが、現実は独立したように見えてロスチャイルド家のような国際金融資本によって設立、管理されてきました。FRBは1913年に設立されましたが、この背後にロスチャイルドや欧州貴族の力が強く働きました。日銀の設立にも同様の力が働いています。
その暗黙の「国際金融資本支配」を排除して、大統領府が直接FRB、つまり金融政策を管理し、通貨の発行、価値までコントロールしたいと考えています。ホワイトハウス(大統領官邸)が金融政策を管理するだけでなく、ドルの発行供給もトランプ氏の顔を印刷した「政府紙幣」の形で政府が直接管理し、その価値を下げて米国の競争力を高めることまで考えているといいます。
その実現可能性はともかく、こうした発想の持ち主が大統領に返り咲けば、ドルの不安が高まるリスクがあります。
かつてトランプ氏以前にも同様に考えた大統領がいます。リンカーン大統領とJ.F.ケネディ大統領です。そして、2人とも暗殺されています。トランプ氏は選挙前から暗殺未遂事件が何度もありました。金融政策の政治支配はタブーとなっています。
バンス副大統領の存在
トランプ氏には「岩盤支持層」がついていますが、それでも「過半数の壁」が厚く、苦戦していました。
そこで共和党での影響力が大きいブッシュ・ファミリーに近づき、その支援を得ました。その条件として、副大統領候補に注文を付けました。当初のデサンティス知事にはカリスマ性がないとして、若いバンス氏を候補に選びました。
トランプ氏は高齢で攻撃的になり、しかも彼を煙たがる存在がいるだけに、途中でバンス氏が大統領に繰り上がる可能性を考えています。トランプ氏の陰に隠れてここまで存在感の薄いバンス氏ですが、トランプ氏が影の勢力にとって不都合となれば、民主党と共和党の一部が手を組んで彼を弾劾することもでき、バンス氏を繰り上げる算段となります。
これも大きな不確定要素になります。