このライセンス事業が伸びている理由の背景には、ハローキティ50周年に合わせた各種プロモーションの拡大や複数キャラクター戦略の成功によって、ライセンシー(IP利用者)のリピート率が向上しているためです。
物販事業においても同様で、キティ50周年記念グッズがインバウンド観光客も含めた幅広い顧客から人気であるため好調です。
一方で、アジア(中国)と米国も成長しています。
なお、地域別売上・利益の推移を見るとこの2つの地域が急成長していることがわかります。
出典:決算短信より作成
最新の決算資料を見ると海外事業の大半がライセンス収入であり、売上高が増加しています。
出典:決算説明資料
北米ではアパレル、玩具、ヘルス・ビューティー領域でのライセンス事業が好調です。ここでもキティ50周年記念イベントや展示会による認知度向上などが貢献しています。YouTubeやTikTok、自社オウンドメディアを活用し、積極的にサンリオキャラをアピールしています。
アジア(中国)では、2022年に中国大手ECサイトを運営するアリババグループ傘下のアイリッシュと提携した効果が出ています。模倣品などの侵害対策なども含め、一定の成果が出始めており、コンテンツ創出力に磨きがかかっていると言えるでしょう。具体的には、アイリッシュは提携する事業者に向けてデザイン監修、製品供給、マーケティング支援などを行います。特にサンリオキャラがデザインされたコスメ、美容グッズなどなどが人気です。
この人気は国内にまで広がり、最近では、「日本でキティちゃんの限定グッズが販売されると中国人の転売ヤーが殺到した」というニュースがありました。
※参考:限定グッズ山積み…“転売ヤー”買い占めか 中国で限定「キティちゃん」即転売…4倍以上の価格にファン悲鳴「真剣に並んでいるから超ショック」 – FNNプライムオンライン(2024年11月4日配信)
この商品は元値の4倍近い価格で取引されているようです。裏を返せば、それほどキティちゃんの人気が高いとも言えます。
その他にも、韓国ではK-POPアイドルがサンリオグッズの写真を投稿し、人気を呼んでいます。これを好機と捉え、アイドルグループや人気コスメブランドとのコラボが加速しているのです。
このようにサンリオの現在の好調は、国内外でのライセンス事業の成長が軸となっているのです。
なぜ売上が倍、利益が10倍に?
ここまでは短期の好調要因を分析しましたが、次はもう少し中長期で考えてみましょう。
驚くべきことに、コロナ前の2019年と25年の修正予想を比べると、売上高は倍以上、営業利益も10倍に届こうかという成長力です。
出典:決算説明資料
営業利益の急拡大はライセンス成長であることを説明しましたが、ではなぜファンにとってサンリオのIPが人気が出ているのでしょうか?
その背景にはサンリオの経営改革とファンの動向が関係していると考えます。
辻社長の経営改革
経営改革の中心は2020年から社長に就任した辻 朋邦社長です。
辻氏は、先代でサンリオの創業者である辻慎太郎氏の孫にあたります。慶應義塾大学を卒業後、サンリオとは関係のない一般企業に就職。2014年にサンリオに入社し、31歳の若さで社長に就任しました。彼は、2022年から2024年までの中期経営計画で「第二の創業」を目指しました。
その内容をまとめると、以下のようになります。
ざっくりまとめると、社内のモチベーションを管理し、適切なプロモーション・商品開発に向けて経営リソースを割いたということになります。
1.では経営陣の若返りと人事制度の整備を行いました。特に驚くべきことは取締役会の平均年齢を65歳から40歳前後まで引き下げたことです。サンリオの主要顧客は若い女性ですが、少しでもその感性に近づけるために、女性の取締役を抜擢するなど組織風土改革に取り組みました。
2.では乱立していた商品を整理し北米・国内の赤字物販商品を少なくするなど経営の効率化に貢献しています。
そして3.では、SNS強化などを行います。
人気のハローキティだけでなく、過去の人気キャラクターをリデザインし、SNSで情報発信することで人気を再熱させています。北米では「Hello Kitty Friends」というYouTube動画を定期配信し、ハローキティとその友達として紹介しています。
こういった社内整備とマーケティング戦略の見直しによって、サンリオの人気が見直され、今の業績の急拡大につながっていると言えるでしょう。
Next: なぜ消費者が夢中になる?サンリオは買いか