今回取り上げる銘柄はアドバンテスト<6857>です。半導体銘柄が軒並み厳しい中で、アドバンテストは業績も好調でこれからますます伸びていくのではないかということで株価も好調に推移しています。しかし、アドバンテストがどういう事業を行っているのか理解している人は少ないかもしれません。半導体に詳しいアナリストの元村氏にアドバンテストの事業内容と強みについて解説していただき、今からでも買うべきなのかを考えてみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
アドバンテストは何を作っている?
元村:アドバンテストは、半導体が設計通りに動作するかどうかをテストする装置やシステムを販売しています。
栫井:半導体は複雑な製品なので、逐一テストをしながら製造を進めていかなければならないということですね。
元村:そうですね。最近は半導体の性能もどんどん上がってきているので、半導体対自体が複雑化していく中でテストの役割も重要になってきているということです。
業績に関してですが、リーマンショックやシリコンサイクルによって一時的に下がりながらも長期で見ると右肩上がりの業績となっています。
事業別の内訳を見ると、半導体をテストする機器とそのシステムの売上が爆増しているというのが足元の状況です。
好調のワケ
栫井:なぜこれほどテストの機器やシステムが売れるようになってきているのでしょうか。
元村:コロナ禍で半導体の需要が伸びたこともありますが、足元をけん引しているのはAI半導体です。
栫井:なぜAI半導体の需要が増えるとアドバンテストの売上が伸びるのでしょうか。
元村:AI半導体は複雑で高単価なんですね。となると、販売する側からすると歩留まりを上げたい、不良品を出したくないということになります。
栫井:「歩留まり」っていうのが半導体ではキーワードになりますよね。歩留まりというと、どれだけ間違いのない製品を作れるかというですね。不良品が一部でも組み込まれていると製品全部がダメになってしまいますし、不良品が多いと当然会社の信用も無くなってしまうので、ものすごいコストがかかってしまうわけですね。
元村:複雑化した製品で高単価な商品ほど、歩留まりは限りなく100%に近付けたいという状況が今でも発生しています。一般的なAI半導体の仕組みとしては、真ん中にNVIDIAが作っているGPUがあって、その周りにHBMという特殊なメモリがちりばめられているというもので、GPUもHBMも複雑な回路設計になっています。さらに、HBMは一つのチップだけで性能を高めるのではなく、高性能なチップを切ったり貼ったり積み上げたりすることでAI半導体全体の性能を高めていこうというもので、より一層複雑化しています。
半導体の製造にはいろいろな工程があって、最終製品のところだけテストしてそこで不具合が見つかっても遅いんですよね。なので、設計段階で不具合が出ない設計になっているか、製造している段階で不具合が発生していないか、というように各工程でテストをする需要が発生します。複雑化するほどテストの回数も増え、AI半導体の需要が上がれば上がるほどテストシステム・装置の需要が増えるという背景があります。
栫井:複雑で難しいけれどもその中で少しでもミスがあれば全部損失になってしまうので、そうならないためにはお金もかけるということですね。
元村:さらに、ファブレス(設計)、ファウンドリ(受託製造)、OSAT(最終組立)がそれぞれ違う企業体になるのですが、異なる企業がそれぞれ異なるテスト装置を使うと、どこで不具合が出たのかということが取りまとめにくくなってしまいます。効率的にテストを行うためには、開発段階から量産体制を築くところまで同じ装置・テストプログラムでまとめてやろうという傾向が出てきています。半導体が複雑になればなるほどテストにも時間がかかるので、テストする装置の台数が少ないと顧客に提供するまでのリードタイムが長くなってしまいます。それを短縮するためには大きの台数が必要だという流れもあります。
栫井:検査待ちの時間を少なくするためにアドバンテストのテスト装置がたくさん必要になるということですね。
元村:こういう流れがあって、特に足元ではデータセンター向けのAI半導体などの需要が増加してくると、テスト装置市場にはものすごく良い風が吹くということです。