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中国企業の参入で低価格競争へ…なぜ家電業界「悪性の競争」が東南アジアで頻発するのか?=牧野武文

今回は、東南アジアの家電市場についてご紹介します。中国は2010年代から、着々と東南アジアに進出を進めてきました。その先兵となっているのがアリババ系のLazadaとバイトダンス系のTikTok Shopの2つのECです。中国製品は価格対性能のパフォーマンスは圧倒的で、それまで東南アジアに定着をしていた欧米ブランドや日韓ブランドを駆逐してしまうほどの勢いがあります。

しかし、中国製品にも問題はあります。それは一定程度浸透をすると、今度は中国ブランド同士で低価格競争という悪性の競争が始まるのです。実際に、ベトナムのバイクの市場で、ホンダを始めとする日本メーカーは翻弄されたことがあります。

では、東南アジアのどの国で、この中国企業による悪性の競争は起こりやすいのでしょうか。

それは、中国製品の販売チャンネルとなっているLazadaとTikTok Shopの浸透度を見ることでわかります。この2つのECが浸透をしている国は悪性の低価格競争が起こりやすく、浸透をしてない国では品質などの価格以外の観点での競争が可能です。

今回は、東南アジアの小家電市場を外観し、どの国であれば中国との悪性の競争が避けやすいのかを考えます。(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2024年11月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『論語なう』(マイナビ新書)、『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』(角川新書)など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

東南アジア各国が嫌がる中国企業の進出

今回は、東南アジアの家電市場についてご紹介します。

現在、iPhoneがインドネシアで販売ができない状態になっています。
※参考:iPhone16、国内での売買は現状禁止=産業省 – NNA ASIA・インドネシア・IT(2024年10月29日配信)

インドネシアでは、国産化率認証という仕組みがあり、この認証を取得しないとインドネシア国内での販売ができないルールになっています。40%の部品を現地調達しなければならないというもので、かなり高いハードルです。それが無理な場合は、40%調達に相当する国内投資を行うことでも認証を取得でき、アップルは約1億ドルの投資を申し出ているとのことです。

近年、東南アジア各国のこのような保護主義的なニュースが目立つようになってきました。

インドネシアでは昨年9月に、一時的にTikTok Shopを禁止にしています。TikTok Shopでは、中国の安価な製品が大量に販売されるため、国内企業が圧迫をされるというのがその理由です。

しかし、その時にはTikTok Shop関連のビジネスに関わるインドネシア人が600万人以上にのぼると見られ、この人たちの仕事が一瞬で消えることになりました。この時のインドネシアのTikTok界隈はそうとうにパニックになったようです。

TikTokでは、規制を受けていない外部ECにコメント欄記載のURLで誘導するなど、多くの人が回避策を求めて右往左往しました。そのような情報がまとめられた通称「TokTok災害復興ガイド」と呼ばれる文章もSNSで拡散をしました。

面白いのはインドネシアのTikTok関係者は、隣国のベトナムやマレーシアに避難をしたということです。隣国ではTikTok Shopは禁止になっていないので、隣国からライブコマースを配信し、隣国のTikTok Shopで買い物をしてもらい、配送をマレーシアにするというものです。

結局、インドネシアではTikTok Shopを禁止しても、国内業者の売上は特にあがらず、効果がなかったということから、現在はTokTok Shopも再開をしていますが、国内価格と比べて中国製品は安すぎることから何らかの規制の枠組みを構築するとしています。おそらく、関税を強化するなどの対応策を取るのだと思います。

安くて優れた中国製品は、国内産業の成長を阻害する…

2010年代終わり頃から、中国はさまざまな分野で東南アジアに進出を始めました。製品を越境ECを通して販売をする、東南アジア各国に販売拠点をつくる、現地企業に投資をするなどです。

この東南アジア進出が本格化をしたのは2020年のコロナ禍です。コロナ禍は中国人にとって大きなショックを与え、中には中国経済の成長は止まると考える人もいました。そこで、リスク回避をするために東南アジアへの進出が本格化をしました。しかし、東南アジア各国は経済成長が始まったばかりで、国内産業が成長をしている最中です。そこで、中国対東南アジアの衝突が起きています。

多くの製品で、中国製品が優れていることは誰もがわかっています。消費者のことだけを考えれば、安くて高性能の中国製品を輸入した方がいいのです。しかし、そうなると、国内産業が成長せず、経済成長が止まることになってしまいます。そのため、各国は中国製品の流入を抑えつつ、国内産業の成長の余地を確保するという難しい判断をせざるを得なくなっています。

そのため、今後も、中国製品は規制されたり、関税をかけられたり、販売を禁止されることが断続的に続くことになります。

Next: 日本「以外」は順調に成長。東南アジアの小家電市場は戦国時代に…

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