2025年2月7日に発表された、フォースタートアップス株式会社2025年3月期第3四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
Agenda
志水雄一郎氏:フォースタートアップス株式会社代表取締役社長の志水でございます。ただいまより、2025年3月期第3四半期の決算説明会を開催します。
本日のアジェンダは、スライドに記載のとおりです。
2025年3月期第3四半期決算 エグゼクティブサマリー

2025年3月期第3四半期の決算概要についてご説明します。まずはエグゼクティブサマリーです。
結果として、第3四半期累計では増収減益で着地しました。売上高は前年同期比プラス9.5パーセント、受注高は前年同期比プラス7.5パーセントの成長となりましたが、営業利益は前年同期比マイナス21.6パーセントで着地しています。いずれにおいても、目標を下回ったことが大きな課題であると認識しています。
2024年11月に開示した第2四半期の決算説明会では、受注ペースが順調であることに加え、10月も受注実績が堅調だったことを踏まえて、前向きなメッセージを残しました。しかしながら、今回はこのような業績を発表することになりました。
キーとなるのは11月の大幅な受注減です。12月は受注を持ち直しましたが、これが今期の業績に影響しています。もともと潜在的に課題があり、それが顕在化したのが第3四半期なのかもしれません。現在はこの課題にしっかりと向き合い、生産性向上に努めています。
要因分析①

要因分析です。1つ目は育成方法の要因で、この社内課題が9割を占めると考えています。一部には外部環境もあると思いますが、当社としてもこの問題が発生した原因を認識しています。
2024年3月期は、質的向上を図るべく経営を行っていました。市場や企業側においても、スタートアップの資金調達環境が悪化する中で、大量採用よりは質的採用にコミットしていたと考えています。
当社はそちらに対し、経営課題にミートできる人材をどのようにご紹介できるかということに挑戦しており、採用単価やポジションの高い求人にフォーカスしながら良い方をご紹介できるように社内の育成体制を整えていました。1人の優秀層に対して2名体制で支援することが功を奏し、厳しい外部環境の中でも前期の業績につながったと思っています。
今期上期も同じ育成方針で進めてきた結果、第3四半期の受注が減少するという課題が出てきました。今後は質的向上だけでなく、質的な部分を担保しながら量的な向上を目指すという育成方針に一気に移行していきたいと考えています。
そして今、市場は戻ってきていると認識しています。
要因分析②

2つ目は、外部要因です。先ほど「今、市場は戻ってきている」とお話ししました。スライド左側のグラフはスタートアップ企業の資金調達額の推移ですが、当期の下期にあたる7月から12月にかけて、資金調達市場は前期よりも大きく回復している状況です。本来であれば上期から戻っているのがベストであり、当社としてはもう少し早く戻ってくると想定していました。
スライド右側のグラフは、コンサルティングサービスの受注がどのタイミングで戻ってきているかを示しています。こちらを見ると、2025年3月期第4四半期で大きく受注が戻ってきており、予算を上回るかたちで推移しています。経営者としては「もう少し早く戻せれば良かった」と考えていますが、第4四半期に戻ってきたことはプラスだと思っています。
コンサルティングサービスを使う企業は、市場が戻ってきた時に受注拡大することが過去の実績から見て取れます。したがって、コンサルティングサービスの売上高が戻ってきていることは、これからの当社の業績にとってプラスになると思っています。
対策及び既存方針の転換

内部要因がほぼ9割である課題に対してどのような対策を打っていくのか、また、既存方針をどのように転換していくのかについてご説明します。
最大のテーマは「一人当たり生産性の向上」です。特に、タレントエージェンシーにおける1人当たり決定件数にフォーカスしていきます。今までは質的向上、決定単価の向上、高いレイヤーの方の支援、1候補者あたり2名体制での支援というかたちで進めてきました。
今後は、1人当たりの決定件数にしっかりとフォーカスし、KPIもより高い水準を達成していきたいと思っています。
第3四半期に表出した課題に対しては、すでに第4四半期から課題解決に向けて活動しています。多くの候補者にお会いしていますが、その面談人数が過去の累計KPIと比較してプラス25パーセント増というかたちで、一気に高まってきました。こちらを、第4四半期の受注高や来期頭の売上高につなげられるように、しっかりとコミットしていきます。
「一人当たり生産性の向上」を推進する上で、1つ目に「採用方針の転換」を行います。育成/立ち上がりの状況を考慮した採用ペースに切り替えていきます。
2つ目は「育成手法の改善」です。質的な向上を担保しながら、量的指標への意識転換を行っていきます。
3つ目は「集客戦略の転換」です。当社はデータベースを活用しながらスカウト活動を行ってきましたが、今後はそれだけでなく自社集客・CRMも強化していきます。このような取り組みによって、しっかりと実績を上げていきたいと考えています。
業績予想の修正

今回、業績予想の修正について発表しました。売上高は37億円、営業利益は3億7,000万円の予想となります。
当社は高い成長を果たすべき上場スタートアップでありながら、このような数字に着地したことを大変遺憾に思っていますし、反省しています。現在は、来期以降の増収増益を見据え、生産性向上に関する各種取り組みを実行中です。
第4四半期後の決算発表ならびに来期の事業計画発表において高い成長を示せるように、しっかりと進めていきます。中でも特に、営業利益にこだわっていきたいと思っています。
自己株式取得枠の拡大について

自己株式取得枠の拡大についてです。従来は取得金額3億円、取得株数25万株の自己株式取得枠を発表していましたが、今回はこの部分を変更します。取得金額は1億円追加の4億円、取得株数は35万株とし、引き続き自社株買いを行っていきたいと思っています。
2025年3月期第3四半期累計営業利益-前期比較

各種指標についてご説明します。まずは、第3四半期累計営業利益の前期比較です。
一番の課題は、売上総利益の増加が想定よりも低くなったことです。これにより減益で着地したため、まずは売上総利益を拡大する政策をしっかりと進めていきたいと思います。
全社(連結)|売上高-四半期推移

全社連結売上高の四半期推移です。第3四半期は前年同期比17.2パーセントの成長となり、好調に推移しました。しかし、こちらには第2四半期に見込んでいた売上高が流れた分も含まれています。なお、人材紹介サービス売上高のみでみると前年同期比プラス21.4パーセントの着地となっています。
全社(連結)|受注高-四半期推移

全社連結受注高の四半期推移です。こちらは前年同期比マイナス2パーセントで着地しました。
人材紹介を中心としたビジネスには月次ボラティリティがあり、これを低くしていく必要があると認識しています。加えて、より高い受注水準が求められていると考えていますので、もう一度高い受注水準を取り戻していきたいと考えています。
タレントエージェンシー|売上高構成要素

タレントエージェンシーの売上高構成要素です。単価は高い水準を示してきましたが、紹介件数の実績をもう少し高い水準にしたいと考えています。今後は、量的な部分にフォーカスしながら経営を進めていきます。
全社(連結)|社員数推移

社員数の推移です。当期末で230名程度での着地を見込んでいます。現在の受注状況を鑑みて、この水準で採用を進めていきます。
生産性を向上した結果、来年度は採用に大きく踏み切ることもあると思いますが、まずは生産性を向上し、受注高と営業利益を大きくできるような体制に移行していきたいと考えています。
質疑応答:新規事業の立ち上げにおけるアップデートについて
「足元の事業状況だけでなく、新規事業の中長期的な展望も投資家の関心事だと思います。新規事業の立ち上げについて何かアップデートがあれば教えてください」というご質問です。
現時点において、明確に示せる内容になっていないことについては大変反省しています。しかし現在は、複数の外部企業とワーキンググループを組成し、新規事業の検討を進めています。
一番長いものでは半年間以上ワーキンググループを組成し、市場の課題に向き合う事業について考えています。
第4四半期は、この新規事業が市場にデビューできるように整備していきます。この部分に関しては、あらためてみなさまにお話しできればと思っています。
質疑応答:生産性低下の根本的な要因について
「『生産性低下』とありますが、根本的な要因は何でしょうか? 経営体制なのか、採用人材の質なのか、求職者の確保が難しいのか、台頭している競合他社があるのか、もうスタートアップマーケットに光がないのか、どのように解釈すればよいですか?」というご質問です。
先ほどお話ししたように、今回の課題の9割は社内要因です。ストレートに言えば、育成方法にあると認識しています。
現在は手厚い育成体制をとっており、必ず1名の候補者に対して2名で対応しています。これは、当社に入社しているメンバーの育成にも関わってきます。早期戦力化にも機能しますし、さらに言えば経験値を高めるという部分においても機能すると考えています。
しかし、本来はもう少し高い量的水準を担保すべきだったものが、少々見落とされていたように感じます。そのため、この部分の量的向上と育成システムとのバランスをうまく取ることが今回の課題認識であり、今後取り組んでいく部分となります。
また、課題が顕在化するまで3ヶ月程度かかってしまったことや、受注が好調であるように見えて、2024年11月に大きく受注を外してしまったことが今回の課題表出につながりました。そのため、今後はより早く潜在課題を顕在化できる経営体制及び、事業の監視体制を整えなければいけないと考えています。
しっかりと課題に取り組み、2025年5月には前向きな計画を発表したいと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。
質疑応答:下方修正発表のタイミングについて
「業績進捗を見ても、第2四半期の段階で下方修正を発表できたのではないかと思います。このタイミングの修正となった背景を教えてください」というご質問です。
先ほどお話ししたように、上期の受注は計画に対してオンペースで進捗していました。さらに第2四半期の決算を発表する2024年11月時点においても、10月までの受注が順調に進捗していたと判断し、売上の転換スピードのズレが出ていましたが、変更を行いませんでした。
しかし、11月受注にて大きく計画未達という結果になりました。当然ながら、月次で見れば受注高の波はあると認識しています。その中で第4四半期の売上高に寄与する額を鑑みた結果、このタイミングでの下方修正となりました。
当社の姿勢として、計画との乖離があることに関してはみなさまにお伝えしなければいけないと考え、このタイミングで発表をしています。
より早く当社のKPIを改善して課題に向き合い、来期の計画につなげていきたいと考えています。
質疑応答:自社株買いを拡大した理由について
「自社株買いの拡大ではなく、配当のみで配当額を増やしたほうが株価にはインパクトがあると思います。自社株買いを拡大することにした理由を教えてください」というご質問です。
ご指摘のとおり、配当は株価に好影響を与えるものと認識はしています。しかしながら、配当に関しては、継続性ならびに安定性、さらに言えば配当性向の高さなども重要だと考えています。
それらを鑑みた際、当社は成長戦略を想定する中で、新規事業や既存事業への投資、M&Aを含むさまざまなコーポレートアクションなど、卓上に並べられるものがたくさんあります。現在はそれらを順番に実行している段階ですので、今回のタイミングにおいては、まだ安定的かつ高い配当を発表するハードルが高いと考えました。
一方で、現在の株主構成や株価の状況を踏まえると、当社が持ち得ている余剰資金の状況を見て自己株式取得に充てるのは、資本効率を高めていく観点からも有意義な選択であると判断し、自社株買いの選択と実行に至っています。
当然ながら、来期における株主還元施策や資本効率向上に関するコーポレートアクションについては引き続き検討していますので、決まり次第、発表できるように準備を進めたいと考えています。
質疑応答:コンサルティングサービスの今後の進捗について
「第4四半期にかけて、採用コンサルティングが上向いているのは良い傾向と見ています。この上向き具合は、今後も継続するのか、高止まりするのか、どのように見ていけばよいですか?」というご質問です。
先ほどもお話したとおり、当社は「コンサルティングサービスの需要が高まれば高まるほど、マーケットもしくはお客さまの人材採用需要の高さにつながる」と認識しています。
一方で、コンサルティングサービスは、人的工数が大きくかかるサービスです。そのため、契約社数においても最適なバランスがあると思っています。
第4四半期の受注水準は高く、良いバランスが取れていると認識しています。この水準を維持し、少しずつ体制を整えて向上させていく流れができていけばよいと考えています。
質疑応答:中長期の人員計画とオフィス移転について
「社員数は目標の250名を230名程度で着地しており、来期はそこまでの人数を採用しない方針とのことですが、中長期の人員計画をどのように考えているか教えてください。その如何によっては、オフィス移転の意味も問われる気がします」というご質問です。
もともと当社のオフィスが入っていた泉ガーデンタワーでは、最後の半年間は一部の会議室が通常のデスクワークで席が埋まるほど、オフィス体制が完全に逼迫していました。そのため、どちらにしても新たなオフィスに移転する必要があったのは事実です。
オフィス移転は、合理性のある判断をして進めるべきものだと思っています。今回の麻布台ヒルズへのオフィス移転は、経済合理性的にも合っていると判断しました。
これを前提とした上で、当社の中期の人員計画は明確かつ着実に増員する方針です。
従来は、人数を前倒ししてでも拡大するという前提で検討してきました。しかし、今後は「一人当たり生産性の向上」、特にタレントエージェンシーの1人当たり決定件数を引き上げていくことにより利益にフォーカスし、しっかりと経営を行っていくことを推進しています。
まずは足元の生産性を向上するための打ち手に取り組むべく、その上で必要な人材は採っていきますが、採用に大きく舵を切るのは生産性が向上した後だと捉えています。まずは第4四半期、そして来期上期においてしっかりと育成活動を行い、生産性を向上していきます。
質疑応答:競合環境の変化と生成AI活用について
「競合環境に変化はありますか? また、AIマッチングやAIエージェントに代表される人材紹介ビジネスにとって、新たな競合の種となるサービスも生まれていると思います。これらをどのように捉えていますか?」というご質問です。
実感値とお客さまからの評価から見ると、当社が一番得意とするのは、平均年齢で30代中盤、平均年収で1,000万円から1,100万円の方です。当社は、テクノロジーイノベーションセクターで活躍できるような方と毎月平均千数百名お会いしています。
この層になると、スタートアップにおいてはCxO、VP、取締役執行役員レイヤー、事業幹部などのポジションにアサインメントされることが多いと思います。そのため、経営課題や事業課題にミートする人材に関しては、実績も含め当社がNo.1ブランドであると考えています。
しかし、メンバー水準の採用支援や中途採用支援においては、多数の人材紹介会社などが競合となると考えています。
そのため、当社の強みはそのまま活かして拡大しながら、当社の競合である分野にもしっかりとフォーカスして攻めつつ、業容を拡大することが非常に大切だと思っています。
今までは、BtoB SaaSを中心とした採用支援が多くありました。直近では、ディープテックの中でも宇宙スタートアップが採用活動を活発化していますので、このようなところに対してもしっかりと取り組んでいきます。
さらにプレIPOの企業群だけでなく、東証グロースに上場したスタートアップの採用支援なども含めて領域を拡大していくことで、より多くの優秀層との出会いに結実させていければと考えています。
併せて、最近では生成AIを活用した人材紹介サービスがあります。リクルートやパーソルなどの各社においても、ヒューマンタッチな生成AI活用を導入しています。当社も現在、予算の編成において、生成AIをどのように活用していくかを議論しているところです。今後も、人材紹介サービスにおける最適な生成AI活用を進めていきます。
生成AIの活用においては、当社がこの事業を始める上でお話ししたことが1つのポイントになると思っています。例えば、上場企業は情報開示義務がありますので、これを活かして人材紹介ができます。しかし、プレIPOや未上場の企業は情報開示義務がありません。秘匿情報となるため、内部のコミュニティに入っていかないと取れない情報だと認識し、当社はプレIPOやスタートアップの人材紹介で成長してきました。
これは生成AIにおいても同様だと思います。開示情報があまりない中でも、それらを参考にしながら最適なスタートアップ支援の紹介サービスを作り上げることは可能だと考えています。
志水氏からのご挨拶
今回、初めて予算を外してしまったことは本当に反省しています。現在はその課題に向き合い、生産性向上を目指して活動しています。それにより、1月はKPIも過去最大まで拡大した月となりました。
第4四半期はしっかりと高い受注を示して、来期につなげていきます。そして来期は増収増益で着地し、営業利益にフォーカスした計画をみなさまにお話しできればと思います。そちらへの準備を含めてがんばっていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
