三菱商事の決算発表が2月6日にあったけど「決算はどうだったの?」と気になりますよね。また、三菱商事の決算を受けて「買うべきかなのか保有している人は売るべきなのか」今後の投資判断に悩んでいる人が多いようです。そこで今回は、つばめ投資顧問が三菱商事の直近の決算発表について詳しく解説していきます。加えて三菱商事を今後買うべきなのか売るべきなのか、どのような観点で判断すればいいのかを紹介します。この記事を読むと、投資判断をより明快にできるようになるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
三菱商事の直近の決算はどうだった?
まずは、三菱商事の決算がどうだったのかについて解説します。
また、決算を受けて株価はどう動いたのか見ていきましょう。
連結純利益が1,308億円の増益
2025年2月6日に、第3四半期決算が発表されました。
内容を見てみると、前年同期比で連結純利益が1,308億円の増益です。
三菱商事に投資している人にとっては、ひとまず安心といったところですね。
第3四半期の決算がある時は、業績予想の上方修正や下方修正が出ることが多いですが、今回は据え置きとなりました。
株価はどうなった

三菱商事<8058> 日足(SBI証券提供)
今回の決算発表では大きな材料はなく、株価はほとんど動きませんでした。
この1年の株価を見ると下げ続けていて、約10%下落しています。
2024年5月のピークから見ると30%以上下落していて、この高値で買っていま不安になっている人も多いのではと思います。
三菱商事を決算説明資料から分析
今回の決算発表は表面上増益となりましたが、深く分析をしてみるとそこまで好調ではなさそうです。
業績は約1,300億円の増益で大きく増えていますが、通期見通しは修正されませんでした。
つまり、第4四半期の業績があまり良くないといっているようなものです。
そこで、この章では増益であるにもかかわらず通期見通しが修正されなかった理由を深掘りしていきます。
なお、企業を分析する際は決算説明会資料を参考に分析をするのがおすすめです。
決算説明資料には利益が増減した理由など、細かく分析するための手がかりが多くあります。
投資初心者の方は、企業分析をする際当記事を参考に決算説明資料にも目を通してみてください。
好調ではない理由
ここでは、三菱商事が増益であるにもかかわらず、通期見通しが修正されなかった理由を深掘りしていきます。
見ていく箇所は、今回の純利益増加に貢献した以下のセグメントです。
- 金属資源
- 地球環境エネルギー
- 食品産業
- S.L.C
それぞれ解説します。
<金属資源>
金属資源のセグメントでは、資源を採掘するための鉱山に投資をして利益を得るビジネスをしています。
金属資源のところを見てみると利益は伸びていますが、詳細を確認してみましょう。
プラスの要因は豪州原料炭事業(炭鉱売却)と記載されています。
一方でマイナス要因をみると豪州原料炭事業(数量減少・市況下落)と書いてあります。
ちなみに、原料炭とは鉄を作る時に必要となる石炭のことです。
先ほど金属資源セグメントでは投資をしているといいましたが、投資しているからには買うこともあれば当然売ることもあります。
つまり、プラスの要因の豪州原料炭事業(炭鉱売却)は売却益です。
なので、これは一度きりの利益となります。
それに対してマイナス要因である豪州原料炭事業は数量減少、市況下落ということで、売れる量が減っていてさらに収益が低下しています。
原料炭の価格は、2021年から2023年にかけてウクライナ戦争などの影響で価格が大きく上がったタイミングがありました。
ですが、直近の価格は落ち着いていて2017年頃から見ると一番低い水準になっています。
このことから、原料炭事業の風向きはいま怪しくなってきているといえます。
<地球環境エネルギーにも悪影響が出てきている>
金属資源のセグメントの苦しい状況により、地球環境エネルギーセグメントにも影響が出ています。
一応増益にはなっていますが、詳細を確認してみましょう。
プラスの要因として、アジア・パシフィックLNG事業(過年度会計処理見直しに伴う減価償却減)とあります。
要するに、これは会計処理方法の変更ということで1回きりの利益です。
またマイナス要因を見ると、シェールガス事業の(市況下落)やLNG関連事業(スポット価格下落)がありいずれも市況価格が下落していて苦しい状況です。