<世界金融危機後の市場状況を活かした戦略>
この成長戦略がうまくいった理由としては、2008年のリーマンショックが背景としてあります。
当時、アメリカの住宅建設業界は中小企業が多く、金融危機によってお金の回りが悪くなり、多くの会社が倒産していました。
そこで、お金に困っていた優良な住宅建設会社を住友林業が買収します。
アメリカには常に住宅需要がありましたが、住宅建設業者が減少していたため住友林業は競合が比較的少ない環境で事業を展開できました。
こうした戦略によって、住友林業は販売数と業績を拡大させてアメリカ市場での強固な地位を確立しました。
<日本の住宅技術の強み>
住友林業が米国で業績を伸ばせた大きな理由として、日本の住宅技術の高さもあります。
米国の住宅建築技術は、日本と比べて約30年遅れていました。
そこで住友林業はこの技術差を活かして、米国市場で高い評価を得られました。
具体的には、耐久性や断熱性はもちろん、空間設計においても優位性があったことです。

日本は土地が狭いため、いかに収納や居住スペースを効率的に配置し広く見せるかという点で洗練された技術を持っています。
一方米国は土地が広いため、このような観点があまり重視されていませんでした。
そこで、日本の技術を取り入れることにより、市場での差別化に成功し人気を獲得できました。
住友林業の株価が下落している理由
業績が好調にもかかわらず、直近では株価が下落しています。

株価が下落している理由としては、以下の3つの要因が考えられます。
- 為替変動によるリスク
- 金利上昇
- 営業利益率の低下
それぞれみていきましょう。
<為替変動によるリスク>
1つ目は、為替変動によるリスクです。
現在の円安環境では、住友林業の海外収益は円換算で増加しています。
ですが、今後はアメリカと日本の金利差縮小により円高転換が予想されています。
円高になれば、海外売上の円換算額が減少し収益に影響を与える可能性が高いです。
そのため、為替変動リスクが投資家にとって懸念材料の1つになっていると考えられます。
<金利上昇>
2つ目は、アメリカの金利上昇への不安です。
現在アメリカの住宅ローンの金利は、6〜7%と高い水準です。
コロナ禍では3%前後だった金利が、現在では2倍以上に上昇したことで住宅購入の月々の支払い負担が大幅に増加しています。
今後景気が悪くなると、高金利のまま住宅を買う人がさらに減る可能性が高いです。
またアメリカの高金利がいつまで続くのかわからないことも、投資家が心配している理由の一つといえるでしょう。
Next: 株価下落の要因、もう1つは?長期投資家は買いか