しかし、そのような状況で心配されるのは、米国債のリスク資産化が一つの引き金になって起こる金融危機であろう。
米国債は世界のどの金融機関も保有している資産である。そのリスク資産化と急落は、金融機関の資金繰りを悪化させる。すると、どの銀行も自己資本の確保の必要性から、銀行間で資金を融通する融資を停止する。すると、十分な資金力のない中小の銀行から、「FRB」や財務省の大規模な資金注入がない限り、順次破綻する可能性がある。これは、2008年の「リーマンショック」で起こった金融危機と類似した状況だ。
ノーベル経済学賞受賞のクルーグマンの警告
実際にこのような金融危機は起こる可能性はあるのだろうか?むろんそれはアメリカで発生するだろうが、影響は世界的になる。もちろん日本も巻き込まれるだろう。
そうした可能性に警告を発しているのは、2008年度のノーベル経済学賞を受賞したニューヨーク大学教授のポール・クルーグマンだ。クルーグマンは最近「金融危機入門、パートI」という記事を出し、そこで金融危機が起こる可能性を以下のように警告した。
景気低迷時に金利が上昇し、通貨価値が下落するという現象は、金融危機に直面する新興市場ではよく見られることです。この記事の冒頭の図は、その一例を示しています。1997年から1999年のインドネシアです。米国では、これほど深刻な状況には至っていません。しかし、私を含め多くの人が、米国の金融危機が初期段階にあるのではないかと感じています。
この記事では金融危機の概念を細かく解説し、米国債のリスク資産化が金融危機を引き起こす可能性があることを警告した。
レイ・ダリオの警告、金融システムが吹き飛ぶ
さらに、クルーグマン以上に警告を出しているのが、世界最大のヘッジファンドの創業者、レイ・ダリオである。ウォールストリートの重鎮として、大きな影響力を持つ。4月14日、ダリオはこれから金融危機が起こるのかという「NBC」のインタビューに答えた。
ちなみに以前からダリオは、歴史には覇権国が転換するサイクルが存在しており、現在アメリカの覇権が転換し、多極型の世界秩序への移行が本格化していると主張していた。2020年にダリオが出した本『Changing World Order』によると、覇権の転換には250年のサイクルがあり、その移行期は10年から20年だという。そして移行期は、新興勢力との対立期になるとしている。
ちなみに、覇権国の盛衰と転換を決定するパラメーターには次に8つがあるとしている。
<盛衰を決定する8つのパラメーター>
1)教育
2)テクノロジーとその開発力
3)世界市場における競争力
4)生産力
5)世界貿易のシェア
7)軍事力
8)資本市場の金融力と準備通貨の強さ
よい教育は高いテクノロジーと開発力をもたらし、国際的な競争力が上昇する。その結果、生産力は高まり世界貿易のシェアも拡大する。それは大きな軍事力の基礎となり、その国の金融センターがグローバルなセンターになる。その結果、その国の通貨が基軸通貨になる。
これらの8つのパラメーターは上昇期には相互に強め合いながら一層強くなるが、下降期には逆になる。







