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株価急騰「FRONTEO」長期投資家は買い?AI創薬は本物か、“プレスリリース芸”か=佐々木悠

株価が急騰した理由とライフサイエンスAIの画期的な発見

フロンテオの株価は長期的に見ると500円前後を推移することが多かったのですが、2022年2月期にはリーガルテックの大型案件獲得で一時的に大きく伸びたこともありました。しかし、それは一時的なもので、その後は再び下落傾向にありました。

そして今回、株価が急騰した最大の要因は、AIによって「膵臓がんの標的分子候補の探索に成功した」という画期的な発見が発表されたことです。

この発見がなぜすごいのか、主なポイントは以下の4つです。

  • 膵臓がん治療の困難さ
  • 膵臓がんは発見時にはすでに進行していることが多く、致死率が非常に高い難病です。

  • 発見期間の大幅短縮
  • 通常2年ほどかかるターゲット分子の発見を、わずか2日で達成しました。

  • 論理的なプロセスと大量の論文解析
  • 医療論文を大量に読み込み、どの分子をターゲットにするべきかという論理的なプロセスを示しました。人間が全てを読むことは不可能な約3500万本もの既存論文に加えて、毎年150万本追加される新しい論文の処理能力は、AIの大きな強みと言えます。

  • 新規性の高い発見
  • 約17の分子候補のうち6個に抑制効果があることを確認し、そのうち4つは既存の膵臓がんに関する論文では言及されていなかった新しい発見でした。

これは実際に薬ができたわけではなく、今後薬を作るための方向性や仮説を立てる段階であり、そのプロセスを大幅に短縮し、既存の論文からは分からなかった新たな示唆を与えた点が特筆されます。実用化には動物実験や人間での治験、承認など、まだまだ多くの段階を経る必要があります。

ライフサイエンスAIの可能性と潜在的な課題

ライフサイエンスAIの分野は、非常に大きな可能性を秘めていると言えます。

  • 市場の成長
  • 調査会社のデータでも、ライフサイエンスAIのサービスやソフトウェアの分野は大きく伸びていることが示されています。

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出典:GMI

  • 政府の後押し
  • 日本政府も創薬産業を国家の基幹ビジネスと位置づける方針を明確にしています(岸田政権、2025年6月)。これは、日本の医薬品市場の世界シェアが2011年の11%から2023年には5%へと半減したことを背景に、創薬ベンチャー支援や創薬基盤への予算投入を積極的に行っていく方向性を示しています。

  • 大手製薬メーカーとベンチャーの提携加速
  • フランスのサノフィ社のような大手製薬メーカーがAI創薬ベンチャーと提携するなど、世界の製薬業界では大手とベンチャーの協業が加速しています。フロンテオも武田薬品工業や第一三共といった超大手とビジネスを進めているのがその一例です。これは、大手製薬会社がAI開発のノウハウを持たないため、ベンチャーの力を借りようとしている実態があるためです。製薬業界では、研究開発費が高騰する中で、AIを活用することでコストを下げつつ品質を向上させる可能性があり、大手企業にとってはこの分野への投資の理由が十分にあります。

しかし、一方で懸念点も存在します。

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  • 激しい競争
  • 世界の巨大テック企業が膨大な資金を投じてAI開発を行っている中で、フロンテオが勝ち抜いていけるのかという課題があります。

  • 内製化のリスク
  • リーガルテック事業で売上が減少した要因の一つに、顧客企業による内製化が挙げられました。同様に、ライフサイエンスAIの分野でも、大手製薬会社が自社でAI開発を進めるようになれば、フロンテオの売上が減少する可能性があります。フロンテオが、他社には簡単に作れないような独自のAI「KIBIT」を持っているかが重要になります。

Next: フロンテオの「怪しい」実態と投資における注意点

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