<インド市場開拓の現状と課題>
クボタは2021年にインドの農業機械メーカーであるエスコーツ社を1,400億円で買収しました。
- 買収前後のシェア
- 強力な競合と価格競争
- インド市場の特殊性
- 価格競争力と今後の戦略
買収当時、エスコーツ社が11%、クボタ単体で2%のシェアでした。 しかし、買収から3~4年経った現在、両社合わせたシェアは12~13%程度と、あまり大きな成長は見られていません。
インド市場のトップは現地企業であるマヒンドラ社で約40%のシェアを誇ります。クボタは2030年までに25%のシェア獲得を目指していますが、道のりは険しいのが現状です。
クボタが当初インドで苦戦したのは、市場の特性を理解していなかったためです。インドではトラクターは畑を耕すだけでなく、木材などの荷物を牽引・運搬する用途でも使われることが多く、日本とは異なるニーズがありました。また、クボタの高性能な製品は、インドの農家にとって価格が高すぎたことも要因です。 エスコーツ社の買収は、クボタの「高品質な製造技術」とエスコーツ社の「安価な製品を作る技術」を融合させ、インド市場に合わせた商品を開発する狙いがありました。
しかし、現在も安価な製品の量産化には至っておらず、マヒンドラ社と同等の価格にするには、クボタが販売する農業機械を10~20%安くする必要があるとされています。 クボタは2030年までにインドに新しいトラクター工場を建設し、規模の経済を活用しつつ、エスコーツ社との連携を深めることで、新製品の開発と販売増加を目指すとしています。この工場は、周辺国への輸出拠点となることも見込んでいます。
現状は苦戦していますが、インドという巨大市場の開拓はクボタの長期的な成長にとって極めて重要であると言えるでしょう。
まとめ
今回の分析を通して、クボタの現状を短期・中期・長期の視点からまとめると以下のようになります。
<短期的な株価の状況と下方修正の要因>
- 北米市場での家庭用ガーデニング需要の減退(需要の先食い)。
- 建設機械の需要一服と流通在庫の積み上がり。
- 競合他社も同様の状況であり、アメリカの設備投資や新規住宅着工件数の回復が鍵となります。
<中期的な「米増産」とスマート農業への期待>
- 日本政府の「米増産」方針と、それに伴うスマート農業の推進はクボタにとって追い風に見えますが、技術的な実用化や農家への普及にはまだ時間がかかります。
- 現在の株価上昇は「連想ゲーム」の域を出ない可能性があります。
<長期的なインド市場開拓>
- 巨大なインド市場でのシェア拡大は重要課題ですが、エスコーツ社買収後のシナジー創出はまだ不十分であり、価格競争力向上に向けての課題が残ります。
このように、クボタは短期・中期・長期のいずれの視点で見ても、比較的難しい局面にあると言えるでしょう。 ただし、シンプルに考えれば、アメリカの建設機械需要や新規住宅着工件数が回復すれば、クボタの業績も自然と回復する可能性はあります。
したがって、今後のポイントは外部環境の変化がいつ起こるのかという点にあります。
これらの情報を参考に、クボタという企業への投資を検討してみてはいかがでしょうか。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年8月26日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。