<⑤NTT(9432)>
バークシャーはかつて米ベライゾン株に投資していた実績があり、通信セクターへの理解は深いと言えます。NTTは安定キャッシュフロー、低ボラティリティ、巨額の自社株買いなど、バフェット氏が好む特性を多く備えています。

NTT<9432> 週足(SBI証券提供)
ただし、東京海上のケースのような事業シナジー(再保険やM&A共同投資)が描きにくい点は大きなハードルです。バークシャーの日本投資が事業パートナーシップ型へ進化している現在、純粋なポートフォリオ投資としてNTTが選ばれる可能性は相対的に低いと考えられます。
とはいえ、データセンターやIOWN構想など通信インフラが保険リスク評価と結びつく展開があれば、面白い化学反応が起こるかもしれません。
バークシャーが重視する「フロート」とは?
バークシャーの投資戦略を理解する上では、「フロート」が重要なキーワードになります。フロートとは、保険料として先に受け取った資金のうち、まだ保険金として支払っていない分を指します。バークシャーはこのフロートを投資に回し、実質的にコストゼロの資金で莫大なリターンを生み出してきました。
バークシャーのフロートは現在約1,750億ドル(約26兆円)に達しています。バフェット氏が保険事業をバークシャーの中核と位置づけてきた理由はここにあります。
<「フロート」を持つ企業に注目>
この文脈で日本の金融セクターを見ると、フロートに相当する資金を持つ業種は主に3つあります。損害保険(保険料)、生命保険(保険料)、銀行(預金)です。
今回、損保のトップである東京海上との提携が決まったため、生保か銀行、あるいはその両方が次の提携候補となり得るでしょう。
特に日本の銀行は、日銀の利上げ局面で資金利益が大幅に増加しており、収益環境が大きく改善しています。三井住友フィナンシャルグループの場合、政策金利0.25%の利上げ1回あたり資金利益に約1,000億円のプラス影響があるとされており、金利正常化はメガバンクにとって強力な追い風です。
バークシャーとの提携を手がかりにした投資戦略
バークシャーの保有比率は2.5%からスタートですが、五大商社同様に将来的な買い増し余地が十分にあります。そのため、すでに東京海上を安値で買い付けられているのであれば、まずは保有継続が合理的です。
一方で、「次の東京海上」を先回りしたい投資家にとっては、本記事で挙げた候補銘柄などを分散的に買い付ける戦略が考えられます。特に三井住友フィナンシャルグループと第一生命ホールディングスは、事業シナジーとバリュエーションの両面で説得力があります。
<中長期視点でのポジション構築が重要>
ただし、いくつかの注意点があります。
バークシャーの投資判断は数年単位で行われるため、「次の提携」が明日発表されるわけではありません。五大商社への投資も、最初の取得開始(2019年)から大量保有の公表(2020年8月)まで1年以上のタイムラグがありました。短期的な思惑で売買するのではなく、中長期目線でのポジション構築が必要です。
また、バークシャーが円建て社債を新たに発行する動きがあれば、追加の日本株投資が近い可能性があります。同社は2019年以降、毎年円建て社債を発行しており、2022年からは年2回のペースが定着しています。
まとめ|バークシャーの日本投資は新章に入った
今回の東京海上との提携によって、バークシャーの日本投資は「商社への株式投資」から「金融セクターとの戦略的パートナーシップ」へと質的に進化しました。単なる株の買い増しではなく、再保険やM&Aの共同投資まで踏み込んだ包括提携は、バークシャーが日本市場を本格的な事業基盤として位置づけ始めた証拠です。
「次の東京海上」として最も有力なのは、フロートモデルを持つ金融機関です。本記事の分析では、三井住友FG(8316)や第一生命HD(8750)を取り上げました。
バークシャーの新CEOであるグレッグ・アベル氏が率いる新体制のもとで、日本投資の第2章がどう展開するか、引き続き注視したいです。
本記事は日本投資機構が運営する金融メディア『INVEST LEADERS』からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による
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