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なぜバフェットとソロスの結論は「米国は中国に勝つ」で一致するのか=東条雅彦

覇権国「米国」に挑む挑戦国の歴史~ソ連

英国は19世紀(1801~1900年)において、工業化によって高まった生産力を生かして、経済力と軍事力で世界の覇権を握りました。英国は武力を用いて、世界各国に自由貿易を認めさせました。世界各地に植民地を持つようになり、「海」を支配したのです。

20世紀に入り、2度の世界大戦が終わり、植民地となっていた国々は次々と独立してきました。植民地を失った英国は衰退せざるを得ませんでした。

世界の秩序は、肌の色による差別や武力での土地支配を倫理的に許さないという方向へ変わってきたのです。

米国は「資本主義+自由民主主義」という新しい秩序を持ち込み、全世界にこの秩序を輸出し始めました。

米国型のグローバルリズムは一部、批判を受けながらも世界に受け入れられて、英国から覇権を取りました。

当時、この「資本主義+自由民主主義」に激しく抵抗したのがソ連(現:ロシア)でした。ソ連は米国の資本主義に代わる社会システムとして、「共産主義」で対抗しようとしました。

米国はソ連との冷戦時代に突入するも、ソ連は1991年に崩壊してしまいます。国民がどんどん貧しくなっていく共産主義は世界には受け入れられず、ソ連は自滅してしまったのです。

欧州

次に米国から覇権を取り戻すべく動いたのは欧州です。1993年にEU(ヨーロッパ連合)を発足させて、ドイツ、イギリス、フランス等の欧州の国々が結束し始めました。

EUを1つの国と見立てた場合、GDPは世界全体の約30%を占める大国になっています。米国のGDPは世界全体の18%程度であり、EUは米国を上回っています。

しかしながら、2016年6月、英国のEU離脱決定により、EUは空中分解する可能性が出てきました。

イスラム国

並行して、米国に立ち向かうテロ組織が巨大化してきます。

ISIL(過激派組織「イスラム国」)は2013年頃から台頭し始めて、ネットを通じて、テロ攻撃を世界各地で呼びかけています。

2016年に入ってもテロ攻撃が頻発しており、米国の「グローバルリズム」に対する抵抗が続いています。この抵抗は世界各地で広がりを見せており、米国の国内でも起きています。

グローバルリズムのヒラリー氏か?地域主義のトランプ氏か?で米国も揺れているのは前述の通りです。

英国が移民の受け入れに難色を示してEUを離脱したのも、グローバルリズムへの抵抗です。グローバルリズムによる行き過ぎた資本主義にストップがかかったのです。

下記に19世紀以降の歴史の流れを簡単にまとめます。

<覇権国 秩序の変化>

19世紀 イギリス 植民地主義
20世紀 米国 グローバルリズム
21世紀 米国か?中国か?

<覇権国 VS 挑戦国>

第1ラウンド 米国 VS ソ連【資本主義 VS 共産主義】
第2ラウンド 米国 VS EU【大国 VS 小国連合】
第3ラウンド 米国 VS 地域勢力【グローバルリズム VS 地域主義】
第4ラウンド 米国 VS 中国【TPP(太平洋) VS AIIB(大陸)】

第1ラウンド、第2ラウンドは米国が完全に勝利しています。

現在、第3ラウンドを戦っていますが、もしトランプ氏が大統領になった場合、米国が今まで掲げてきたグローバルリズムは修正されるでしょう。

バフェットは一貫してヒラリー氏を支持しています。

「資本主義の欠点」をバフェットはどう考えているか

資本主義の欠点は、社会に競争をもたらすことで経済的敗者が生まれてしまう点です。この競争がもたらす負の側面について、バフェットは2016年2月27日に公開した「バフェットの手紙」の中で次のように述べています。

たとえ「負けた」側の一員であっても、
以前よりもずっと多くの財やサービスを享受できるのはほぼ確実ですし、
またそうすべきだと思います。

さらには、増加した恵みの質(クォリティー)も劇的に改善されるでしょう。

人々の要求を満たしたり、
もっと言えば人々がまだ理解していない要求を提供する、
そのような市場システムに伍する仕組みは存在しません。

出典:2015年度バフェットからの手紙(1)「米国」が抱える金のガチョウ – 節約発投資行き

欠点はあったとしても、今よりも優れた社会システムはないだろうというのがバフェットの見解です。

現時点で、米国の大統領に選ばれるのがヒラリー氏になるのか?トランプ氏になるのか?はわかりません。ただいずれにしても、世界の趨勢は第3ラウンドから第4ラウンドに向かって突き進んでおり、今はその過渡期なのです。

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