もんじゅをなくして、核燃サイクルが成り立つのか
「もんじゅ」は、実施体制の再整備どころか、まったく稼働のめどが立たない。年200億円をこえる国費は人件費を中心とする維持管理費に消え、開発の進展にはつながらない。
さすがの原子力規制委員会も、運営主体を日本原子力研究開発機構から別の組織に代えるようにという、実現不可能な勧告を出し、「廃炉やむなし」の姿勢を打ち出していた。
この流れを受けて、経産省は「廃炉」に傾き、文科省は「温存」に固執、安倍官邸への働きかけ合戦が繰り広げられた。その結果、「核燃サイクル」の神話を守りつつ、トラブルメーカーの「もんじゅ」をそこから切り離す方向性が固まり、9月21日の関係閣僚会議において廃炉を含む抜本的な見直しを行うことが決まった。
だが、ここで疑問がわく。「もんじゅ」をなくして、「核燃サイクル」が成り立つのか。
こういうとき官僚はしたたかだ。「もんじゅ」は廃炉にするが、「高速炉」の研究は続けるという理屈をでっち上げたのだ。それなら、「核燃サイクル」の旗を降ろさずに済むというわけだ。
もちろん新高速炉などできるわけがない。空気や水に触れると激しく反応するナトリウムを冷却材に使うかぎり、安全管理は非常に難しい。開発先進国の英独はすでに撤退、フランスも実証炉の建設にまでこぎつけながら、結局は廃止した。
なのに、この国ではまだ高速炉の研究を進め、税金を投入するという。これまでの歴史を振り返ってみれば、それがいかに虚しいことか、再確認できるはずだ。
「もんじゅ」は日本原子力研究開発機構(JAEA)という独立行政法人が開発を進めてきた。
エネルギーに関する原子力政策は経産省、科学技術に関する原子力政策は文科省と、省設置法で所管省庁が整理されている。経産省は、今後も事故やトラブルを起こす可能性が高く原発推進の阻害要因となりかねないとして「もんじゅ」の廃炉を進める方針を固めた。
だが、素直に評価できないのは、高速炉の研究を断念しないからだ。これは組織の温存にほかならないのではないか。
文科省にとっても、経産省にとっても、JAEAは自分たちの老後の安泰のために大切な天下り組織である。これまで随意契約による事業発注でファミリー企業を養い、ポストを数多く確保してきた。その規模をできるだけ縮小したくないのだろう。
JAEAの職員は約3,700人。平成28年度予算額は1,370億5,400万円で、うち「もんじゅ」を含む高速炉研究開発に282億8,500万円を計上している。
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