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大塚家具の社長交代劇に思う──会社はだれのものか

大塚家具問題が一区切り感を見せました。経営方針の対立での今回の問題となりましたが、投資家はこの問題をどう見ているのでしょうか。山崎和邦先生が大塚家具問題を、投資家の立場から話しています。

株主にとって関心あるものはあくまで指標だ

山崎和邦 週報「投機の流儀」』(2015年4月5日号)より一部抜粋

「会社はだれのものか、などというバカバカしい議論がある」、としばしば言うが、実はこの問いには絶対的な回答は難しい。「決まっているではないか、株主のものだ」という議論と「利害関係者ステークホルダーのものだ」という回答との間を振れて、その振れ幅は「株式市場寄り」と「オーナー寄り」と、公害事件の場合などは“企業は社会の公器だ”というテーゼによって近隣社会を含めた「社会全体寄り」のものがあり、それは少々行き過ぎとしても時期により情勢に寄り、「株主主権」か「ステークホルダー主権」が優勢になる。

株主にとっては資本の効率利用性を示すROE(自己資本利益率)が重視されるのは主として米国であり、日本市場では専らPERとPBRと利回りであってROEは話題になること少なかった。米国企業ではROEは日本企業を大きく上回る。日本企業は先進国平均と比べてPER、PBR共に割安だがROEについてはそうは言えない。

筆者は平均値しか見ないが「株主主権を越えて」(広田真一著、東洋経済刊)によれば、日本におけるROEは上位と下位との差は少ないと言う。少数の上位企業がリードする米国と多数の平均的企業が手堅く頑張る日本との差であるらしい。だが、225銘柄の日経平均に比べて全銘柄の平均TOPIXが低いという事実は市場は必ずしもそうは答えていないことになる。

株主にとって関心あるものは
(1)PER
(2)PBR
(3)配当利回り
(4)利益剰余金の使途
(5)それらの源になる収益力の伸び方
(6)そのまた源になる売上力の伸び方
(7)借入金と売上との比率(無借金経営が最高ではない。それは縮小均衡を志向し易い体質になる場合もある)
(8)それらを統治する企業ガバナビリティの在り方
である。

普通、市場ではあまり話題に上らないが、この(8)が弱まるとオリンパス事件やソニーのDNA喪失による衰弱、日本電気の内紛による衰弱、等のように株価に大きく反映される。

大塚家具の場合は従来成功してきたビジネスモデルを改変するという件だから内紛と言うよりビジネスモデルの重点たるブランドマネジメントの問題である。あんなに大っぴらに騒ぐものでなく、(A)高級ブティック経営か、または(B)少々大衆路線へ拡販しイケアやニトリを真似るか、の問題だから社内で専門家も入れて充分に検討するべきものであった。

危険なのは一旦(B)に切り替えたらブランドマネジメントを放棄したと世間に解されて、おおげさに言えば「三越の特別顧客用の品物がドンキホーテでも買えるようになった」ことになり、その場合は成功すればイケア、ニトリを追い上げ可能だが失敗したら、一旦格下げしたブランドは元に戻すのに10年はかかる。

筆者は野村の後、三井ホーム(コード1868)の常務取締役を長年務めてきた期間に、ブランドマネジメントの改変のことで社長との正面対立を長年続けていたが、全社の経常利益の6割を私の所管で出していたから私には手をつけられなかった。結果的には筆者が任期満了で退任したあと、ブランドマネジメントの失政から売上・利益は3分の1、株価は最高時の4分の1になってしまった。

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