あの記者会見で僕の「楽観論」は吹っ飛んだ
2017年の相場について、僕は昨年末、「トランプ氏の政治が意外とうまく行き、夏頃までは上昇トレンドが続くのでは?」と予想しました。
しかし、僕のこの「楽観論」は、12日深夜の記者会見で、こっぱみじんに吹っ飛びました。僕だけでなく「世界が失望した」のではないかと思いますし、あの不穏な空気から「明るい未来」を描くことができた人は、あまりいなかったのではないかと思います。
あの記者会見については、「期待された経済政策についての言及がなく、失望感から相場がリスクオフになった」などと報じられました。
しかし、僕は、あの会見の本質は「トランプ政治の危うさが露呈されたこと」であり、それがリスクオフの要因だったと見ています。経済政策への言及がなかったから下げたわけではない、と思うのです。
また、「確かに雰囲気は悪かったが、トランプ氏の経済政策が変わるわけではない。大丈夫だ」といった楽観論も聞かれました。しかし、僕は、あの「雰囲気の悪さ」こそが大問題だと感じています。
トランプ政治の「息苦しさ」がリスクオフ要因となる
先の記者会見は、いわゆる「ロシア疑惑報道」の否定から始まりました。その論調は一方的で「CNNの報道はデマである」の一点張りでしたが、メディアとの「ぎくしゃく感」や、会見場の「息苦しさ」は相当なものでした。
日本でも安倍総理の長期政権下で、報道が政府寄りとなり、特定秘密保護法案や安保法制が強行的に採決され、次は「共謀罪の法制化」も検討されるなど、「息苦しい」状況が続いています。
先日は、政府を批判する内容が含まれる書籍(『日本会議の研究』)が発売禁止になるなど、ちょっと驚くような出来事もありました。
ただ、こうした日本の状況など「かわいく」思えるほど、あの会見場の「息苦しさ」を強く感じました。
今後、あの調子で「トランプ政治」が進むとしたら?相場にとっては、かなり「まずい」ことです。あの「息苦しさ」が相場のリスクオフ要因になる可能性があります。
また今後、実際に具体的な「まずいこと」が出てくるのではないか、という予感もあります。
当選後の穏健な姿は「仮の姿」だった?
僕は、当選後のトランプ氏のスピーチに「賭けた」のです。あの穏やかで融和的だったスピーチに。
彼が、あの路線で政治をやってくれるんだったら、アメリカが、そして世界が、いい方向でまとまる可能性がある、と。しかし、どうやら、そうはならないようです。
トランプ新大統領が、先日の会見で見せたような、強権的、独裁的な態度で政治を進めたら、どうなるか。
まず、彼の国(アメリカ)が混乱します。いえ、すでに十分、アメリカは混乱しています。そして、アメリカが混乱したら、どうなるか?世界が混乱します。
トランプ氏は、ろくに事実関係を調べもしないで外国を批判したり、外国に無理な要求をつきつけたりもします。そうすれば、当然、外交がぎくしゃくしますし、地政学的リスクも高まります。
世界が混乱して、地政学的リスクが高まったら?政治経済が混乱してマーケットに不安心理が充満したら?当然、マーケットはリスクオフになり、円が買われ株が下がります。
そうなったら最後、アメリカの金利が上がろうが、アメリカが革新的な政策を実行しようがリスクオフの流れは止まらないし、それがむしろ「裏目」に出たりするようになる可能性があります。
彼が、当選後のスピーチのような穏健な態度ではなく、選挙運動中の「獣(けもの)」のような姿で、大統領職を遂行するとなれば、これまでの楽観論を悲観論に置き換える必要が出てきます。
僕が提示した、相場に対する楽観的な見方も、当然、撤回しなければならなくなります。