日本企業にも大打撃
世界経済の改善を受けて輸出主導の拡大を見せている日本経済にも、少なからぬ影響が及びます。世界貿易が縮小すれば、真っ先に日本の輸出が影響を受けるからです。
また世界のイスラムによる反発の声は、直接的には米国とイスラエルに向けられていますが、世界で唯一このトランプ大統領を支持している日本も同一視され、テロの対象となるリスクがあります。特にサウジを中心に中東でビジネスを展開する日本企業は要注意です。
汚職撲滅で大ナタを振るうサウジのムハンマド皇太子は、長期的な経済戦略として「脱石油」を打ち出しています。日本政府は今年3月、そのムハンマド皇太子と、サウジの産業競争力強化、代替エネルギー、健康・医療など、幅広い分野で2030年に向けて協力することで合意しました。これには多くの日本企業が参加する予定です。
例えば投資促進として、金融分野から三井住友、三菱UFJ、みずほが名乗りを上げ、エネルギー事業では東電、出光興産など。また新素材では日揮が、淡水化では東洋紡、JFEエンジニアリングといった具合です。この他、日本郵便、トヨタ、伊藤忠、丸紅、荏原なども関わっています。
ところが、トランプ政権の上席顧問でユダヤ系のクシュナー氏と手を組むムハンマド皇太子の「粛清」に対し、サウジ内部から強い警戒とともに反発が巻き起こっているのが現状です。クシュナー・トランプ両氏によるエルサレム承認発言が、サウジ国王をはじめとするイスラム・スンニ派を中心に強い反発を呼んでいるわけです。
サウジには、「9.11」を仕掛けたとされる過激派グループも少なくありません。
日本は「米国の別働隊」になる
アラブ世界からのテロにより、中東における米国利権が排除されるリスクがある中で、もし日本が「米国の別動隊」と見られれば、米国企業とともに日本企業もターゲットになる恐れがあります。
とりわけ、中東でも特殊な環境に置かれたサウジが問題であり、ここに進出する日本企業が大きなリスクを抱える可能性が高くなります。
サウジの特殊性は、国内に軍隊を持たないゆえに、米軍に守ってもらう代わりに石油の安定供給を約束してきた点にあります。それが今や、米国はシェール・オイルの増産で世界有数の産油国になり、サウジの石油に依存しなくなってしまいました。それだけ米国の「サウジを見る目」が変わっているということです。