さらに追い打ちをかける「物価上昇」
足元では物価の上昇も消費には大きな抑圧要因になっています。勤労者世帯の賃金が増えず、ボーナスも増えず、年金が実質減少し、税社会保険料負担が増えているだけでも、可処分所得が圧迫されます。これに加えて、生鮮食品やエネルギーなどの価格上昇が、家計には「増税」と同じような負担になります。
12月の全国ベースの消費者物価は生鮮品を含む食料品と電気ガスやガソリンなどエネルギーの上昇を中心に、現実の物価(帰属家賃を除いた総合)が1.3%上昇し、これが実質家計消費を圧迫しました。1月の東京都を見ると、1月にはこれが1.7%にさらに高まることを示唆しています。1月の消費と賃金は、名目で余程増えないと、実質でのマイナスが避けられなくなります。
海外景気に左右される日本
10-12月期の日本のGDPは、輸出が引き続き増えているものの、輸入も増えたので、「外需」の成長寄与はあまり期待できません。その中でまた個人消費がマイナスになると、GDP全体が低成長になります。
米国では個人消費がGDPの3分の2を占め、消費が好調ならGDPも強いと見られますが、日本では家計消費が半分もありません。それだけ輸出、とくに海外需要に大きく左右されやすくなりました。
ここまでは世界経済が好調であったため、輸出も拡大してきましたが、中国や米国経済に変調が出ると、そのまま日本の景気に跳ね返りやすくなりました。
家計消費という安全弁が小さく、しかも脆弱になっているためです。このまま消費のシェア低下が進むと、経済はそれだけ不安定になります。
国内消費がじり貧を続けるため、企業の国内での設備投資はどうしても慎重になります。人手不足対策としての省力化投資、インバウンド消費目当ての投資、輸出向けの投資が中心で、かつてのような増産・拡販投資は抑制されます。個人消費の肩代わりを設備投資に期待するわけにはいきません。結局、輸出依存が高まるわけで、海外景気に余計左右されやすくなります。