今回の解答
あなたはネット掲示板で、保有銘柄企業の元従業員を名乗る人物が、会社に批判的な書き込みをしているのを見つけました。書き込み内容は、足元の業績悪化や幹部・経営陣に対する批判などで、いまのところ株価に影響は出ていないようです。さてここから、どのようなスタンスで対応するのが最も正しいでしょうか?
(3)書き込みの真偽に関係なく、株価が下げ始めたらいつでも売却できるように準備する
(1)「当該企業のIRに電話で連絡を取るなどして、書き込みの真偽について事実確認につとめる」のように動いたところで、それでどうなるものでもないのが相場です。
また同じように、何が原因で相場が動き出すかも分かりませんので、(2)「真偽を確かめようがないネット掲示板の書き込みは無視し、うかつに投資姿勢を変えないようにする」と決め込むのも感心できません。
値動きに従うことが大切なのは、唯一値動きのみが損益という結果に結びつくからです。正解は、(3)「書き込みの真偽に関係なく、株価が下げ始めたらいつでも売却できるように準備する」となります。
株式投資にはこれだけは押さえておきたい、企業のファンダメンタルズを反映した数値がいくつかあります。主要なものを、拙著『相場力アップドリル・株式編』の語句の解説から引用します。
・EPS(Earnings Per Share)
1株益。税引後利益(当期利益)を発行済株式数で割ったもの。規模のメリットに惑わされず、1株当たりのリターンを比較できるため、業績を比較するのに最も便利な指標。増益は好材料
・ROE(Return On Equity)
株主資本利益率。当期利益を期末株主資本で割ったもの。株主資本を使ってどれだけの利益をあげているかを見る比率。この比率が高いのは好材料。最も的確に経営者の優劣を判断できる指標との見方もある
・PER(Price Earnings Ratio)
株価収益率。株価をEPSで割ったもの。株価が収益の何倍まで買われているかをみる。株価収益率が高いほど、利益に比べ株価が割高であることを示し、逆に、株価収益率が低いほど、株価が相対的に低いことを示す
などでは、企業の収益力や、収益に対して株価がどれだけ買われ過ぎているかが分かります。また、
・PBR(Price Book-value Ratio)
株価純資産倍率。株価を1株当たり純資産(=貸借対照表上での株主資本にあたるもので、資本金、資本準備金、利益準備金などで構成)で割ったもので、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているのかを示すもの。一般にPBRが低いほど、株価は割安といわれる。1株当たり純資産は企業の解散価値(現時点で会社が清算した場合、株主に支払われる1株当たりの金額)を意味するから、PBRが1倍未満ということは、株価が企業の解散価値より低いということを意味している
・CFPS(Cash Flow Per Share)
1株当たりのキャッシュ・フロー。企業が保有する現金、預金を発行済株式数で割ったもの。この数値が高いのは好材料。資金繰りがつかないために黒字倒産などという例もあることから、近年ことに重要視されだした指標。高すぎるCFPSは、資金の有効利用ができていないとして、LBOの標的になる場合もあるので、その側面からも株価には好材料
などでは、その企業の安全性が分かります。
しかし、これらの数値は企業そのものやその株式の経済的価値を、他企業との比較で教えてくれるものであって、将来の株価を暗示するものではありません。おまけに、その数値や広報がどこまで正しいかとなると、「信じるしかない」のが実情です。
いずれにせよ、しょせん株価は、誰かが買わないと上がらないのです。情報はあくまで情報であって、株価やあなたの収益との直接的な繋がりはありません。
とはいえ、企業買収におけるTOB価格のように、株価に決定的ともいえる影響を与える情報があることも事実です。そういう情報を噂の段階から知っておくことは、株価の動きに敏感になるためにも役立ちます。
したがって、あえて情報の真偽を問わず、あらゆる情報に耳を傾けることは重要なのです。そして、売り買いを行うのは、実際に株価が動き始めてからにするのがいいでしょう。
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