「日本版スチュワードシップ・コード」は機関投資家のマスターベーション
個人的には、スチュワードシップ・コードが「投資先企業と投資側の緊張関係を高める」効果は限定的だと思っています。
何故ならば、「企業と投資側の緊張関係を高める」ために最も効果的な手段は、「投資対象から外す」というもののはずだからです。
先日放送されたWBSの中でも「この会社については赤字が続いておりまして配当もゼロでございますので、経営責任を追及すべきだということで取締役選任に反対を致しております」という担当者のコメントが紹介されていました。
しかし、ここで湧いてくるのは「赤字が続いて配当もゼロ」という会社に投資する必要があるのか」という疑問です。
長年アクティブ・ファンドを運用して来た経験からすると、「赤字が続いて無配当」の企業には「投資をしない」というのが運用責任者としての取るべき手段であり、それでも投資するというのであれば、資金を預けてくれている投資家に対して、それでもその銘柄を保有する理由を説明するのが運用責任者に課せられた責務だと思います。
「赤字が続いて無配当」で「経営責任を追及するべき」企業に投資をし続けながら、株主総会で否決される可能性の低い議案に反対票を投じることが、「企業と投資側の緊張感」を高めることに繋がるという考えには疑問を抱きます。
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