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WBSも囃す「日本版スチュワードシップによる株高」は幻想でしかない

株主総会ピーク週を迎え、注目を集める「日本版スチュワードシップ・コード」。機関投資家が投資先企業に対し果たすべき責任や行動規範を定めたもので、大口投資家の「モノ言う株主」化によりROE向上や株価向上につながる、と報道されています。

しかし、元ファンドマネジャーの近藤駿介氏は、企業と投資家の緊張関係を高めるには「投資対象から外す」のが最も効果的と指摘。日本版スチュワードシップは機関のマスターベーションであり、“官製相場”における日銀ETF買いがそれに拍車をかけると分析しています。

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「日本版スチュワードシップ・コード」が株高に繋がっている?

6月下旬に集中する企業の株主総会を控え、日本の機関投資家がその対応に追われていることが報道されています。それは、2014年2月に金融庁が策定した「日本版スチュワードシップ・コード」への対応。

「機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な『目的を持った対話』(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、『顧客・受益者』(最終受益者を含む。以下同じ。)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任」を意味する」(金融庁「日本版スチュワードシップ・コード」より)

日本版スチュワードシップ・コードは、投資家による経営監視やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の取り組みが不十分であったことがリーマン・ショックに繋がったという反省から、2010年に英国で機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンスの日本版にあたるもの。

先日の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」のなかでは「投資先の企業と、我々投資側のとの緊張関係が高まってガバナンスというところが強まっていると思いますので、それが今の株高に繋がっている」という大手運用会社の人のインタビューが流されていました。

「スチュワードシップ・コードを受け入れたことが今の株高に繋がっている」というコメントには、最近の株高はこれまでのバブル的な株価上昇とは異なるということを伝える意図が含まれているのだと思います。

しかし、「日本版スチュワードシップ・コード」が自主ルールとして正式に策定され、多くの機関投資家がこの受入れを表明したのは最近ですが、大手の資産運用会社が投資先企業の株主総会議案に対して賛成・反対の意思表示をすることは、10年ほど前から行われていることです。

さらに、今回の株高は日本版スチュワードシップ・コードが策定される前から始まったものであるうえ、異次元の金融緩和に伴う円安による企業収益の改善という金融現象の影響が大きいことを考えると、「株高の中で日本版スチュワードシップ・コードが策定された」のであって、「日本版スチュワードシップ・コードが株高に繋がっている」というのは誇大広告のように思われます。

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