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AIIBとドル離れは国際的マネーロンダリング規制が産み落とした“鬼子”かもしれない

AIIBやBRICS銀行など、アメリカ主導の国際金融体制に異を唱える動きが加速しています。麗澤大学の真殿達経済学部教授は、IT金融帝国たる米国による経済制裁やマネーロンダリング規制が、かえって分離独立した市場の拡大を促す可能性を指摘しました。

「スイスに隠せば安心」は昔話。徹底的に補足される資産

BNPパリバ事件

FIFAの幹部逮捕はちょうど1年前の米国司法省によるBNPパリバへの巨額罰金事件を思い出させた。

データ処理技術に長けた司法当局ならば、金融機関の取引先の様々な不祥事を容易に追跡できる時代になったのである。しかも、金融機関の合併が進み、業務展開がグローバル化していれば、国を越えて検査が及ぶことになる。

昨年6月30日、米国司法省は世界最大規模の金融機関BNPパリバに対して、金融制裁の対象に指定していたスーダンやイランとの取引は米国の国内法に違反するとして89億ドルの罰金を科すと発表したのだった。

国内法を海外の居住者に適用するという強引さと日本円で1兆円近く(現在なら上回っている)の史上最大の罰金に世界は度肝を抜かれた。

BNPパリバは右から左にスーダンやイランの金を扱っていたとは思えない。スーダンやイランの関係者にしても様々な法人やビークルを使った複雑な仕組みを通して金が流れるようにしていたはずなので、通常ならその補足は困難だったはずだ。

マネーローンダリングさながら、あるいはもっと複雑なルートが作られていたに違いない。それでも米国司法省は動かぬ証拠を突きつけることができた。BNPパリバは米国内の金融取引の一切から手を引くのか、罰金を払うかの二者択一を迫られ、大した抵抗もできないまま、1年分の利益を吹っ飛ばす道を選んだのだった。

BNPパリバの摘発はロシア向けの金融制裁に大きな影響を及ぼした。マレーシア航空機事件に加えウクライナ東部内戦が激化するに伴い、米国が主導するロシア向け経済制裁は拡大した。

最初は制裁対象をプーチンの取り巻きとプーチン自身の資産を預かる銀行に限定し、「財布の中身や金の流れのからくりをすべて知っているぞ」と脅しただけだったが、効き目がないとみると金融制裁を拡大させ、合算すればロシアの金融資産の6割を超える大手銀行を制裁対象に加えた。

EUや日本の銀行は、わずかな抜け駆けをしても米国当局の知るところとなるため横並び対応を取った。ロシア企業向けの金の流れは締め上げられ、かつてなく有効な金融制裁が実現したのである。BNPパリバ事件なくして、ここまでの整然とした金融制裁はありえなかった。

IT金融帝国の行く末

FIFAの本部はスイスにある。スイスの銀行も米国の金融技術とデータ処理の網の目を潜り抜けることはできない。BNPパリバと同じ目に遭うわけにはいかないので最初から米国司法省にきわめて協力的である。スイスに金を移しておけば守秘義務が守られるので安心だ、という話は遠い昔の神話になってしまった。

スイスの銀行に限らない。どこの国でも銀行は最近まで金融当局に対して、融資先や預金者の取り調べは肩越し検査であるとして、かたくなに拒んできたのだったが、金融技術の進化、ITの進化 、データ処理の進化がすべてを変えてしまった。

忘れてはいけないことは、圧倒的に金融IT技術で優位に立つ国が恣意的に政治問題を発生させることも可能になったことである。

逆に、技術革新が生み出した市場の地球規模化はゲーム・メーカーの集中支配を嫌って、分離独立した勝手が効く市場を生み出す圧力を高めることになる。

ドル離れ、ユーロ離れ、BRICs銀行、AIIBという動きは、新たな遠心力が始動し出した兆しと見ることができないだろうか。透明性が欠如すれば、IT金融帝国の行使する権力基盤もまた徐々に蝕まれて行くことになるのかもしれない。

筆者プロフィール:真殿達
国際協力銀行プロジェクトファイナンス部長、審議役等を経て麗澤大学教授。米国ベクテル社とディロン・リードのコンサルタント、東京電力顧問。国際コンサルティンググループ(株アイジック )を主催。資源開発を中心に海外プロジェクト問題への造詣深い。海外投資、国際政治、カントリーリスク問題に詳しい。

投資の視点』(2015年6月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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