ギリシャ債務問題は、22日にEU首脳会議が急遽召集されるなどギリギリの調整が続いていますが、はたして解決の糸口は見つかるのでしょうか?
メルマガ『いつも感謝している高年の独り言』では、スイスのプライベートバンクによる予測シナリオを紹介。自国債務を「違法」と認定したギリシャ議会に返済の意志はなく、デフォルトは不可避としています。
「全員が幸せになる」可能性はわずか5% ギリシャ予測シナリオ
ギリシャの結末はどうなるのか?スイスの資産運用プライベート・バンクの予測を紹介します。円グラフを参照下さい。
第1位
35%の確率で「混乱の果ての債務不履行」になる。ギリシャは約束した返済期日、金額を無視した上で、ギリシャ側が払える範囲の金額で債務返済は続ける。貸し手側にとっては、債権の帳消しにはならないのが唯一の救い。
(しかしこれは甘いかも?通貨ユーロ圏として留まるには、資本流出制限が必要)
第2位
25%の確率で「秩序ある債務不履行」。通貨ユーロ圏内に留まる為に必要な支援を受ける代わりに、貸し手側との協議を続行。資本流出制限となる。ギリシャ国内での債務に対して、ギリシャは政府借用書、即ち新通貨を発行しなければならない。
(これも甘い。ギリシャにとっては累積債務が増えるだけである)
第3位
20%の確率で「結論先延ばしの妥協」。この夏の期間だけでも生存させるための支援金をギリシャに渡す。
(△貸し手側はこれを望むだろうが、借り手側は拒否する。累積債務が増えるだけだから。借り手側が望んでいるのは借金の減免である)
第4位
15%の確率で「秩序ある債務不履行で、なおかつギリシャのユーロ圏離脱」。貸し手側と完全に対立する事態となる。財政政策に関しては、EUの要求条件に縛られずに独自路線を持つことになる。
第5位
5%の確率で「全員が幸せになる結末を迎える」
自国債務を「違法」と認定、ギリシャ議会に返済の意志なし
ギリシャ議会の「債務真相究明委員会」による調査報告書が発行されました。以下は調査報告書の要旨です。
報告書要旨のポイント
ギリシャの債務の実態はこれまで暗闇の中であった。債務の実態を究明するために、2015年4月4日に「公的債務真相究明委員会」が議会内に設立され、これまで調査を続けてきた。これはその調査報告書である。
結論部分
ギリシャに債務を返済する能力はなく、その上、そもそもこれらの債務は返済すべきではないものである。
その理由はギリシャ国民の基本的人権を侵害するものだからである。違法であり、ルール違反であり、おぞましいものゆえに、ギリシャはこの債務を返済すべきではないというのが我々の結論である。
ギリシャ当局とEU加盟メンバーの他国政府(独、仏?)と組んで、破綻しそうな複数の金融機関を守る為に2010年の公的債務からの再建を妨害する陰謀を仕組んだのだ。
2010年、2012年のギリシャ危機の救済支援基金とは、複雑な仕組みで外部から強制的に持ち込まれたものである。
この時の支援基金はギリシャ側が管理したものではなく、貸し手側が厳重に管理して勝手に濫用したものであり、その1割も満たない金額が、ギリシャ政府の歳入に組み込まれただけだった。
それ以外の9割以上は他の用途に充てられたことが分かっている。
第一章
債務が膨れ上がったのは、政府支出が過度に多かったのではない。実際にEU圏の他の国々よりも政府支出は少なかったのだ。債務が膨張した理由は、まず貸し手側の金利が異常に高かったこと。過大な軍費支出、違法な資本流出による税収低下、商業銀行への自己資本注入の為に債務が膨れたのだ。
(国民を救済したのではなく、倒産する商業銀行を救済したという訳だ)
ユーロという統一通貨圏の問題
統一通貨ユーロを採用した為にギリシャの私的債務が増えた。欧州の銀行危機が現在進行形で姿を現し、それがギリシャの国家債務危機を増幅させた。ギリシャの前政権の政策が政府財政赤字を増やし、公的債務も増やして、2009年の国家債務危機の発生を助長させたのだ。
最終章
この報告書が現在の破壊的な緊縮策や苦境から脱出を望む人々の有効な道具になる事を希望する。古代ギリシャの歴史家のトゥキュディデスは「民主主義とは少数の者のためではなく多数の人々のために存在するものである」と語っている。
最終章では、「累積債務で悩む南欧諸国よ。後に続け!」と言っているのでしょう。ギリシャ議会内の真相究明委員会が「ギリシャ債務は基本的人権を侵害する違法なものゆえ、返済する義務はない。無理強いしたって、返済能力は皆無だ」と断言したのです。
ギリシャ議会は決断したと考えるべきで、そうなればギリシャ政府も従うはずです。ギリシャの首相、財務相は口を揃えて「トロイカは違法な借金を押し付けてきた」つまり「我々、ギリシャは被害者だ」と言っているのですから――終わりです。
『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2015年6月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による