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メディアが伝えなかった中国人投資家の反応とは? 暴落で黙った新華社、はしゃいだ日本=ふるまいよしこ

言葉を失った中国経済メディア。習近平体制の問題点とは?

株式市場の暴落で揺れる中国人投資家たち。暴落の動向自体は経済専門のウォッチャーに任せるとして、その陰で中国社会において語られているトピックをピックアップしてみる。

経済メディアという“番犬”を失い暴走した株式市場

「経済評論家の呉暁波氏はこのほど、こう書いている。『(市場の)バランスが崩れたのは公共監督の調整能力の問題だ。昨年以来、主だった経済メディアが次々と濡れ衣を着せられて信頼を傷つけられ、第3者としての監督能力をほぼ失ってしまった。権力を味方につけた投機者はそれに乗じて好き勝手のし放題となり、“番犬”を失った資本市場は好き勝手に蹂躙され、多くの個人投資家がその代価を支払わされたのだ』」

「株式市場の加熱の始まりに、経済評論家の多くが投資家たちの膨らんだバブルムードを冷却させようと手を尽くした。しかし、この時まだ、プロフェッショナルな経済メディアは以前受けた報道規制から目覚めていなかった。市場が値下がりを始めたばかりのときに声を上げるべきだった経済メディアは、1枚の紙でもたらされた禁令に喉元を締め付けられた──「暴落に触れるな、情緒を煽るな」と。そのまま取材もせず、声を上げず、そうして(もともとそれらのメディアが指摘し、逆に濡れ衣を着せられてしまった)虚偽の目論見書やIPOにおけるさまざまな抜け穴はそのまま見過ごされてしまったのである」(以上、「メディアという“番犬”を失った資本市場が結局蹂躙されてしまった」より)

「中国政府系メディアが大暴落をもたらした」業界内から批判も

少なくとも胡錦濤時代には、中国メディアにおいて、特に経済メディアは自由度が高かった。彼らはやっと世界的に注目されるようになった経済市場の公平性を保つために、企業のシステム、社会体制、時には社会問題についても、一般総合メディアよりも広い権限で自由な報道姿勢を保てることができてきた。

だが、習近平体制になってからその経済メディアにもこれまで以上の禁令が発されるようになった。かつての「経済発展に寄与するためのデータを提供する」というお題目が、すっかり削減されたようだ。

その結果、市場判断するための情報が大幅に減り、またそれに乗じて市場参与者の虚偽や誇張が行われてもそれをメディアが暴露できなくなってしまった。上記の記事は、所属メディアを超えた現役記者たちが集まるサイトに掲載されていた。業界内でもそうした禁令や「濡れ衣による公的信頼性の低下」が、今回の大暴落をもたらしたことを指摘する声が出てきているのは注目に値する

ブルームバーグも今回の暴落に際して、当日のうちに「政府系メディアが世論を煽っていた」と、政府が国営通信社である新華社を利用してムードづくりをしていたことを指摘している(英語版)

中国では何かの事件が起こると、その禁令のほとんどが「新華社の原稿を統一使用すること」と命じる。つまり、政府の宣伝機関の最たるものが新華社なのである。政府が動かせるメディアはもちろん、新華社以外にもあるが、新華社が唱える論調には中国国内のメディアは反論できず、そのために絶対的な世論制御権を持っている。

「わずか数ヶ月前、新華社は人々の心を激しく揺さぶる言葉を発して中国株式市場を高値に押し上げた。それが今、市場が日増しに混迷を深めている中で、この政府系メディアはなにも語らおうとしていない。多くの人たちが、政府がこの株式市場の暴落をいかに評価し、またいかなる反応を見せるのか、好奇の目で見守っている」

だが、メディアにはやはり禁令が出ており、抑えた論調と政府のお墨付きの範囲内でしか今回の暴落事情を報道できていないのが実情だ。

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§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな』(2015年7月11日号)より一部抜粋・再構成
※太字・見出しはMONEY VOICE編集部による

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