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復活の日本板硝子で+36.4%、どうすれば圧倒的「割安株」が見えるのか?=栫井駿介

推奨理由(昨年2月、推奨時のレポートより)

日本板硝子<5202>は、その名前の通りガラスメーカーです。主に建築用や自動車用のガラスを製造しています。板ガラスのシェアは、旭硝子<5201>やサンゴバン(仏)と並び世界トップクラスです。

かつては旭硝子に次ぐ国内2番手にすぎませんでしたが、そこから一気にグローバル企業へと押し上げたのが2006年のピルキントン(英)の買収です。当時は、売上高が自社の2倍以上にもおよぶ「小が大を呑む」買収として話題になりました。

しかし、この買収が日本板硝子を苦しめることになります。

ひとつは、買収に伴う金利負担の増加です。当時は現在のような低金利ではありませんでしたから、買収資金の借入れに対して多額の金利を支払わなければなりませんでした。昨年度時点でも、金利負担は180億円にものぼります。

もうひとつは、のれんや無形資産の償却・減損です。会計の話なので少し難しいかもしれませんが、要するに高く買ったものを毎年少しずつ分割して費用にしないといけないということです。これにより、会計上の利益が押し下げられます。

さらに、2008年のリーマン・ショックによる景気悪化の不運も重なり、同社の業績は低迷を続けます。ピルキントン買収以降の10年間に6度もの最終赤字を計上しました。資本の減少に歯止めがかからず、2010年には約500億円の公募増資も実施しています。

経営も混迷を極めます。もともとドメスティックな会社でしたから、自社よりも大きい外国企業をコントロールする素養はなく、現地の社長は外国人・日本人とめまぐるしく交代しました。

しかし、ようやく最近になって明るい兆しが見え始めたようです。現地法人のコントロールを現地に任せる方式を採り、軌道修正を図っています。また、過剰設備や不採算事業をリストラし、企業グループのスリム化を行っています。

もっとも、リストラを行ったことがかえって赤字を拡大させ、昨年度は過去最大の最終赤字を記録しました。しかし、リストラによる損失は一時的なものであり、その後の業績を改善させる効果があります。

注目したいのが、時間の経過に伴う経営指標の改善です。これまで、ピルキントン買収に伴う「無形資産の償却」として毎年約80億円を計上してきましたが、これが今年度より30億円に減少します。借入金の返済も進み、金利負担も減少するのは既定路線です。

リストラと償却費・金利負担の減少により、売上が横ばいになったとしても、年間100億円程度の業績改善効果が見込めると考えます。劇的な景気後退にでも襲われない限り、V字回復を遂げることは難しくないでしょう。

ガラスメーカーの最大のリスクは、中国勢による低価格攻勢です。汎用のガラスは、中国メーカーによる低価格商品が大量に製造され、国内で捌ききれないものが世界市場に溢れています。「普通のガラス」を作っていたのでは、中国勢には太刀打ちできないでしょう。

そこで、日本板硝子は「VA(Value Added)品」の拡大を目指しています。規模を追うのではなく、利幅の大きい高性能品を強化しているのです。例えば、現在建設中の「宇宙船」と呼ばれるアップルの新社屋に同社の製品が採用されました。このような取り組みを今後も増加させる方針です。

高性能品を開発するには研究開発が不可欠ですが、これまで財務に余裕がなく、あまり力を入れることができませんでした。そこで今週、日本政策投資銀行とメガバンクが出資するファンドから種類株で400億円の資本を調達し、借入金の返済と開発投資に充てることになりました。

市場は株式の希薄化を懸念し、株価は大きく下落しましたが、種類株は基本的に現金で返済する方針のものです。資本が減少していたため、万が一に備えて財務体質を強化する目的もあるでしょう。

競争環境や景気悪化のリスクはありますが、ビジネスの中身に問題のある会社ではありません。利益が出るようになれば、売上高6,000億円に対して時価総額730億円はあまりに安いと言えるでしょう。「圧倒的な割安株」として推奨いたします。


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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2018年6月19日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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