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お涙頂戴はなぜ悪いか?安保問題と「聖羅ちゃん」のパラドックス=佐藤健志

中身のない「お涙頂戴」話は、どんな結論にも加工できる

「聖羅ちゃんツイート」に限った話ではありませんよ。SEALDsの某メンバーの発言を思い出してください。いわく。

安倍首相は日本を「美しい国」、「すべての女性が輝く社会」、「一億総活躍社会」にしたいそうです。しかし現状はどうでしょうか。この国には、進学を諦めキャバクラで働き家族を養わなければならない十代の子がいます。

この国には、子どもの学費のために裏で自分の内臓を売り、生活を食いつなぐ母親がいます。この国には、何度も生活保護を申請したが拒否され、食べるものもなくやせ細り、命を失った女性がいます。この国には、ひとりぼっちで、誰にも看取られることなく、冬の寒空の下、路上で命を落としていく人々がいます。

やはりお涙頂戴ですが、話をこう続けたらどうなるか?

だから強い経済が必要なんです!そのためにすべきことは、構造改革とグローバル化の徹底です!既得権益の否定、岩盤規制の打破、そしてTPPの早期批准!これらが達成されれば、放っておいても女性は輝きますし、一億総活躍もおのずと実現されるんです!今、お話ししたような悲劇だって、すべて防げますよ!!

政権打倒も何もあったものじゃありませんね。

「空襲で親友を失った戦争の語り部」の場合

あるいは、こんな「戦争の語り部」トークはどうでしょう。

女学校時代、一番の仲良しだったA子さんが、
戦争末期、勤労動員で軍需工場に連れてゆかれ、
空襲で還らぬ人になってしまいました。
戦争は許せません。
私たちはいつも「平和がいいね」と話していたのですが…。
息を引き取る直前、A子さんは何度も何度も
「もっと生きたい」と涙を流して訴えていたそうです。

これだって、話の持ってゆき方次第では以下のようにできるんですよ。

女学校時代、一番の仲良しだったA子さんが、
戦争末期、勤労動員で軍需工場に連れてゆかれ、
空襲で還らぬ人になってしまいました。
アメリカは許せません。
私たちはいつも「勝つまで頑張ろう」と話していたのですが…。
息を引き取る直前、A子さんは何度も何度も
「仇(かたき)を取ってほしい」と涙を流して訴えていたそうです。
降伏したとたんアメリカに尻尾を振って、
70年たっても追従をやめないとは、まったく恥ずべきものです!

たまにはこんな語り部がいても悪くないとは思いますがね。

本当の「自由」は、主体的な思考の先に

とまれ、お涙頂戴はなぜ悪いか?ずばり、どんなことのダシにでも使えるからです。

そして、物事をまともに考えようとせず、チープな感情に支配されたまま付和雷同することこそ、全体主義の始まり。われわれの自由は、主体的な思考を続けることによってのみ保証されるのです。

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三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015/11/11,18,25号より

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