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米利上げ、恐るるに足らず。世界的な「資金余剰状態」は続く=若林利明

資産運用業界の好環境は変化なし

企業活動の活性化を通じて経済成長を助長する低金利政策は、また別の役割を派生させることになります。

企業の投資活動が十分にあれば良いのですが、成熟化した先進国の中で本腰を入れて業容拡大を狙った大規模投資がそれ程簡単に見つけられる訳ではありません。ベンチャー的な事業開発案件の資金需要はあるでしょうが、これはあくまで卵です。

実験的、先行投資的資金需要の域に留まる範囲では、資金需要の額は限られたものになります。一方で、低金利の影響はすべての業界に普遍的に浸透、巷にはお金が溢れることになります。

さらに、これまで高金利のもと貯蓄に励んできた人たちの行動にも影響を及ぼします。お金がお金を生まない構造になっているのです。

日本の個人金融資産の現状をみれば良くわかります。1700兆円を超える日本人個人金融資産の残高は大雑把に50%は銀行の定期性預金です。年利1%にも満たない状況では、もう少し高い水準を考えても不思議ではありません。

機関投資家の顧客も低金利の状況下で、それなりのリターンを実現している運用機関があれば資金を委託することはごく当たり前のことです。現在、資産運用市場は、証券市場、債券市場、金市場、原油先物市場等多くありますが、証券市場以外は市況変動要因が、為替、金利といったごく限られたものであり変動が一方通行になるのが特徴です。

多様性に富んだ運用市場は間違いなく証券市場です。投資ビジネスで積極的展開を求める人々はその活路を株式に求めることにより各種投資手法を開発します。

ヘッジファンドに代表されるような新たな運用手法が開発されるのは証券市場です。

こうして、低金利、資金余剰状態は企業活動の活発化を促す役目を期待されながら、一方で資産運用、取り分け証券市場に潤沢な資金を提供、好環境が実現されているのです。

2015年、年初から米国金利上昇について連銀が何時、決断するかが大きな話題になってきました。金利引き上げが景気の落ち込みを招くようであればその判断が社会的非難を浴びることになります。

それでも、経済成長が若干プラス、しかも持続性が考えられる状況では、金利のボトムアウト感を示す必要があります。その意味が強い引き上げ論議と見られております。

金利引き上げ時に必ず論議されるのが金融市場からの引上げ論ですが、しかし、今回予想される引き上げは警戒的ポーズを示すといったものに留まる事は明らかです。広く、世界が金利上昇局面に入るとは到底考えられません。

米国連銀の金利政策は自国のことは無論ですが、他国の経済、為替状況も考えながら判断されております。結果として過度の米国金利水準の上昇は新興国通貨から米ドルへとの流れを促進する副作用も考えなければなりません。

こうした米国金利を取り巻く環境を考えれば、目先の調整的金利引き上げの動きに限定されるのは明らかです。資産の運用環境、取り分け証券市場の環境に大きな変化が起こる可能性は殆どないと考えて良いでしょう。

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

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投資の視点』(2015年12月1日号)より一部抜粋

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