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スー・チー人気で過熱する「日本のミャンマー投資」が失敗する理由=真殿達

11月8日のミャンマー総選挙でアウン・サン・スー・チー氏が勝利したことにより、日本では対ミャンマー支援・投資の機運があらためて高まりつつありますが、ずばり勝算はあるのでしょうか?

国際協力銀行プロジェクトファイナンス部長などを歴任し海外事情に詳しい真殿達氏は、「陣取りゲームはすでに終わっている」としたうえで、「政権交代をきっかけとした対ミャンマー支援は、先行国に対する周回遅れの提灯買いになるだけだ」との見方を示しています。

「今さら」のミャンマー騒ぎ~国際投資環境の視点から

経験皆無のスー・チー女史に何ができるか?

ミャンマーの選挙でアウン・サン・スー・チー(スー・チー女史)の率いる勢力が勝利し政権を担当することになった。ピンと来ない。それでどうなの?という感じがする。

選挙が終わった以上、見るべきは、近隣国の繁栄から取り残された国がどんな勢いで追いついてくるのかだけである。ビル・クリントンの大統領選挙勝利後の側近への台詞ではないが、女史が心得るべきは「It’s Economy, Stupid!」(編注:重要なのは経済だ、愚か者め!)である。

まずはそのお手並み拝見である。なにしろ、女史はその人気に比例する能力を発揮するに足る経験を全く積んでいない。軍事政権に圧力をかけ続けてきたアメリカでも懸念の声が上がり始めている。

2歳の時にビルマ(その後ミャンマーと改称)独立の英雄だった父親のアウン・サン将軍が暗殺され、その後インドとイギリスで教育を受け、イギリス人と結婚し、母親の病気見舞いに帰国して以降、不幸にして自宅に軟禁された時間が長い。

その統治能力が確認できるような実績は皆無である。誰がどのように女史を政治のヒロインに担ぎ上げたのか、振り付けてきたのか、財政的支援を行ってきたのか定かならぬも、今現在は、民主主義という幻想が作り上げた政治家以外の何者でもない。

すでに齢70歳、失敗は許されない。なのに、テクノクラート(編注:高度の専門的知識を持つ行政官・技術官僚)集団はいない。

遅すぎる日本の対ミャンマー投資

課題は山積している。

民族間のいざこざ、宗教対立、軍人の既得権の処理や処遇という半世紀に及ぶ軍政の後始末、インドと中国に挟まれた地政学上の難しさ、欧米との関係や距離感、何よりも貧しい国民の生活水準の向上等は百戦錬磨の大指導者でも上手くやるのが無理と言えるような難題ばかりである。

日本の関係者の間には、これから本格的な支援や投資だ!というユーフォリア(編注:ここではバブル期に特有の過度な幸福感を指す)が存在している。

しかし、まずコストパフォーマンスを考えなければならない。

確かに、新政権の誕生に合わせて、スワッ!チャンス!ということかもしれないが、官民挙げてご祝儀的に、バスに乗り遅れないために、と称して援助資金や投融資を安易に投入してよいものかどうか。

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